レース仕様の公道版MC12ベルジオーネ・コルセも登場
ちなみにストラダーレは、GT1クラスのホモロゲーションを得るために、年間25台以上の生産が義務付けられていたため、2004年には30台、翌2005年には25台の生産がマセラティ・コルセで行われた。ボディカラーはホワイトとブルーのコンビネーションのみとされるが、これは、かつてマセラティのレース活動をサポートした、キャスナー・モーターレーシングへのオマージュ。1960年と1961年にスターリング・モスを擁し、ニュルブルクリンク1000kmをティーポ61で制したのはもっとも大きな功績だ。
そしてMC12のもうひとつのバリエーションといえるのが、フェラーリのFXXに相当する「MC12ベルジオーネ・コルセ」である。FXXがエンツォからさらにチューニングを進めた12台のサーキット専用車だったが、MC12ベルジオーネ・コルサは、逆にレースで使用されていたMC12コンペティツィオーネをベースに、吸気制限などさまざまなレギュレーションで縛られていた制限を解除。
たとえばリヤミッドに搭載される6リッター仕様のV型12気筒自然吸気エンジンは、レース参戦時には吸気制限で最高出力が600馬力にまで抑え込まれていたが、いわゆる自由を得たこのベルジオーネ・コルサの最高出力は、同エンジンでも755馬力にも達する。
これに2ペダルの6速カンビオコルサを組み合わせるのも、3ペダルのコンペティツィオーネとの大きな違いとなっている。車重も1150kgにまで低減。とはいえ、インテリアは機能的かつ上質なもので、メーターはF1マシンと同様にステアリング一体型とされていた。
GT1がFIA-GTシリーズの主役であった時代、マセラティMC12コンペティツィオーネは確実にひとつの時代を作り上げた。そしてロードカーの世界においても、あのエンツォよりもはるかに少ない台数のストラダーレ(ロードカー)とベルジオーネ・コルサ(サーキット専用車)を生み出したのだ。その価値は、あるいはエンツォやFXXよりもはるかに大きいといえるのかもしれない。