Mサイズミニバン王者の牙城が崩れる時が来る
しかし、ステップワゴンは2005年5月のフルモデルチェンジで迷走する。スポーティ路線で評価されていると考えたのか、全高を下げてしまったのだ。低床コンセプトを極めたことで室内高は従来モデルと同等を確保していたが、ライバルより小さく見えたことは致命的だった。つり目のフロントマスクも不評の理由で、それまでの人気ぶりがウソのようにMクラス・ミニバンでの勢力図が変わっていった。
2009年10月には初代のイメージに立ち返った4代目モデルが誕生する。デビュー当初のラインアップは標準系とカスタム系(スパーダ)ともに2リッターエンジンだけの設定で、スクエアでライバルに負けない立派なボディもサイズを小型車枠に収めた全車5ナンバーと基本に立ち返った。しかし、3代目での失速を取り戻すことができなかった。
2015年4月に登場した5代目は、ライバルとはまったく異なるテクノロジーや装備で差別化していた。具体的には、1.5リッターのダウンサイジングターボと、縦横に開く「わくわくゲート」が特徴となるが、ハイブリッド・トレンドに対してダウンサイジングターボだけでは勝負にならず、2017年9月に2モーター式ハイブリッドを追加設定するが、時すでに遅し。ノア/ヴォクシーやセレナにはダブルスコアで差をつけられていたのが実際だ。
こうして、ステップワゴンの歴史を振り返ってみると、やはり初代と2代目が好印象となるのは否めない。6代目モデルが原点回帰とばかりに、初代に通じるスタイリングとなったのは、ステップワゴンの勢いを取り戻したいという思いがあるからに違いない。
では、歴代ステップワゴンのベストモデルは初代なのかといえば、個人的には2代目を推したい。
そのポイントは世界観にある。じつは2代目には車載して使うことを想定した「ステップコンポ」という折りたたみ電動アシスト自転車が用意されていた。オプションのAC電源を装備すれば、走りながらステップコンポのバッテリーを充電、目的地では電動アシスト自転車でサイクリングという楽しみ方が提案されていたのだ。
素性のいいハンドリングやシャープなエンジンによる走りの楽しさ、ステップコンポを使ったモビリティをミックスした楽しみ方……、実際にステップコンポを購入したユーザーはごく一部だったろうが、そうした世界を見せてくれた2代目ステップワゴンの勢いを、はたして6代目ステップワゴンは再現することができるのだろうか。