課題の多い全固体電池だけでなく全樹脂電池にも注目
しかし、開発を先導してきたとみられるトヨタが昨年発表した内容によれば、東京オリンピック・パラリンピックで伴走車などとして使われた試作車の結果から、ハイブリッド車(HV)に向いた特性であることが分かってきたという。また、量産へ向けては材料から探す必要があることを明らかにした。この報告を読み解けば、HVに適しているとは、満充電に向かないと見ることができ、それではEVに使えない。全固体電池のEVへの実用化は容易でないといえそうだ。
安全性についても、ラミネート型リチウムイオン電池を使う日産は、発売から今日に至るまで一度も発火などの事故を起こしていない。既存のリチウムイオン電池が、使い方次第で安全な商品として十分機能することを立証している。
そのうえで、日産の電池開発に尽力した人物が、日産を退社したあと次に狙いを定めるのが全樹脂電池だ。全固体電池を見極め、あらゆる用途での蓄電に最適な全樹脂電池事業に打って出た。
最良の電池とは、本質的素性の見極めはもちろん、同時に、どのように機能させるかという使い方や制御の仕方が重要だ。だからこそ、米国のテスラは汎用のリチウムイオン電池でEVを走らせ、EVの量販を実現している。
技術的に高度であることへの期待はよいが、実用化できなければ意味のない開発となる。単品の性能だけでなく、使い方を含め、本質をどこまで見極められるかが電池の未来を決定づける。