かつて手がけたマシンの機能を採用したスーパーカー「T.50」
T.50のメカニズムに迫ってみよう。エクステリアデザインは、もちろんエアロダイナミクスの極致ともいうべきもので、そこにはやはりマクラーレンとの共通項を見出すこともできる。
ボディサイズは全長×全幅×全高で4352×1850×1164mm。現代のスーパースポーツとしてはコンパクトな数字といえるだろう。基本構造体はもちろんカーボン製のモノコック。したがって車重はわずかに986kgしかない。
最大の特徴といえるのは、もちろんリヤに備えられる400mm径のファンで、これは正確には「ファン・インタラクティブ・エアロシステム」と呼ばれる。走行中にアンダーボディを通過してきた空気をさらに加速して排出し、同時に左右ツインのリアスポイラーを作動させることで空気効率を最適化する。
ちなみにそのモードは2タイプのオートマチックと、ドライバーが選択できる4タイプが設定されている。もっとも大きなダウンフォースを得るモードでは、スタンダードな設定と比較してその数値は50%増にも達するという。
ミッドに搭載されるエンジンは、コスワースから供給を受ける3.9リッターV型12気筒自然吸気。注目の最高出力&最大トルクは663馬力&467Nmとされるが、驚くべきは最高出力の発生回転数。それはじつに1万1500rpmという数字で、レブリミットは1万2100rpmという高回転型だ。アルミニウム製のエンジンブロックを始め、チタン製のコンロッドやバルブなどの軽量化も徹底されており、エンジン自体の単体重量は178kgが達成されている。
これもまた妥協を許さないマレーの仕事、まさにあのマクラーレンF1が30年の時を超え、21世紀に復活を遂げたかのような印象である。
組み合わせられるミッションは、オーソドックスな3ペダル&Hパターンの6速MT。ドライバーズシートをコクピットのセンターにレイアウトし、斜め後方に2名分のパッセンジャーシートを装備するのも、マクラーレンF1という前例に等しい。
ブレーキはフロントに6ピストン、リヤに4ピストンのブレンボ製モノブロック・キャリパーを装備。ディスクも同様にブレンボ製で、径は各々370mm、340mmのカーボンセラミック製となる。また、ブレーキング時には、ブレーキモードを選択しておくことで、リヤのファンやスポイラーとの協調制御で、約240km/hからの完全停止までの距離を約10m短縮することも可能となる。
GMAではさらに、このT.50をベースとしたサーキット走行専用モデルの「T.50・ニキ・ラウダ」を25台限定生産するプロジェクトも進行中だ。
そもそも100台という限定数を掲げてすでに完売したとされるT.50。さらにハイパフォーマンス化が図られ、希少性の高いニキ・ラウダもまた瞬時にソールドアウトしている可能性は高いだろう。ちなみにこのモデルが発表された2月22日は、ラウダの誕生日にほかならなかった。