フェラーリを普通のクルマ同様に使用していた猛者もいた
また、決してそれほどのお金持ちではないのに、フェラーリに乗って乗って乗り倒して乗り潰した伝説の男がいる。予備校講師のOさんという方だ。
彼は、スーパーやコンビニへの買い物から地方への出張講義まで、ありとあらゆるところにフェラーリF355スパイダーで出かけた。しかもほとんどオープンで! 電動オープン機構の酷使により、しょっちゅう幌が閉まらなくなっていたが(F355スパイダーの幌は、100回開閉すると損耗して故障し、修理に150万円かかるという伝説がある)、そのままボディカバーをかけて露天の賃貸駐車場に止めていた。風が吹けばカバーは飛び、大雨が降るとカバーが落ち込んでプールになり、車内も水浸しになった。
O氏は「せっかくフェラーリ買ったんだから、乗らなきゃ意味ないじゃないですか!」と、編集部とまったく同じことを言っていた。彼は自ら「フェラーリ破滅教教祖」と名乗り、フェラーリをボロ雑巾のように酷使した偉人である。
が、彼のF355スパイダーは、酷使によって文字通りのボロ雑巾になり、エンジンをはじめあらゆるところが不調になり、タダ同然になった。それでも彼は続いて360スパイダーを購入し、車体に直接自転車を載せるなどの荒行を続けたが、そちらも破滅し、結婚を期についにフェラーリを降りた。
いずれにせよ、フェラーリに乗りまくる人は非常にまれだ。「なぜ?」と問われれば、冒頭の「一般的には、メリットがなにもないから」という答えに戻ってしまう。
フェラーリなどのスーパーカーは、食べ物に例えればフォアグラのようなものである。あなたは毎日毎食フォアグラが食べたいですか? 私は遠慮します。体に悪いし出費もかさむし、毎日食べてたら美味しいとも感じなくなるじゃないですか!
それでも、フェラーリを買ってすぐのころは、その麻薬的な快楽の虜になり、私の場合、年間4000〜5000キロ走っていました。もちろん目的地は箱根などで、コンビニではありませんでした。一度、韓国・ソウルまで自走しましたが、半分取材でした。
でも、そのペースはせいぜい4~5年。その後は年間2000〜3000キロくらいに落ち着きました。平均は年間1000〜2000キロと言われています。
私がいま乗っているフェラーリ328GTSは89年式ですが、走行距離2万8000キロ。以前のオーナーの皆様に感謝! やっぱりフォアグラは、毎日食べるもんじゃないんです。