この記事をまとめると
◼︎ロッキーとライズに設定された「e-SMARTハイブリッド」に試乗
◼︎1.2リッターの新開発エンジンを搭載したモデルも登場
◼︎「良品廉価」の名に相応しい仕上がりとなっている
コンパクトSUV界に待望のハイブリッドがついに登場!
「世の中の状況の変化に伴う各国の環境規制を見ていて電動化も視野に入れたとき、ハイブリッド化(以下、HEVと略)をするにしても、まずは“素”の状態でも性能や燃費のいいエンジンが必要です」、とおっしゃるのは今回、ダイハツの新開発エンジンの開発リーダーをされていた堀川さん。
2019年にモデルチェンジを行ったダイハツ ロッキーとトヨタ ライズは今回、既存の1リッターターボエンジンに加え、新開発の直列3気筒1.2リッターエンジンを搭載。さらに同じ1.2リッターエンジンを発電機として使うシリーズ式ハイブリッドの「e-SMARTハイブリッド」を新開発してラインアップに加えた。パワーやトルクがもっと欲しいと思えばキリがないけれど、これまでの1リッターターボエンジンでもパフォーマンスは十分。しかし、今後の世界の環境規制や電動化に対応するためには性能や燃費に優れた新しいエンジンの開発が必要だったのだ。
DNGA(Daihatsu New Global Architecture)という軽/A/Bセグメントの車輌のプラットフォームを採用し、とくにロッキーのようなAセグメントのなかでもボディサイズの大きなクルマにとって一番いいエンジンをつくろうということになったのだという。
コンパクトでクリーンな1.2リッターエンジンはそのままの”素”の状態でも性能に優れるのはもちろん、それを動力とする新開発の「e-SMARTハイブリッド」を搭載するモデルもエンジンを発電専用にすることでシンプルな構造とコンパクトなシステムを実現。「スマートペダル」と呼ぶアクセルペダルの加減で速度をコントロールできるワンペダルドライブも採用されている。
また、リチウムイオンバッテリーをリヤシートの下に配置することでラゲッジの収納スペースもほとんどと言っていいくらい犠牲になっていない。コンパクトSUVとしての実用性はそのまま、というワケだ。そんなハイブリッドモデルは、コンパクトSUVのなかで28.0km/L(WLTCモード)というトップクラスの低燃費を211万6000~234万7000円(税込み車両価格)という低価格で登場させているのだから、我々日本のユーザーにとってもメリットは大きいと言えるだろう。
「e-SMARTハイブリッド」のドライブフィールは重厚さを伴う安定感と静粛性、そしてモーターによる加速の良さはもちろん、速度コントロールの意のまま感にも好感を抱いた。クリープ走行も可能なハイブリッド車のロッキーは、走り出しから40〜50km/hあたりで走行する街中での扱いやすさが、静かさも含め、とにかくいい。後で紹介する1.2リッターエンジン搭載モデルと比べてハイブリッド車は90kgほど車重が重くなるけれど、それがネガとは思わぬ動力性能と、それを確実にタイヤから路面に伝える確かさも重厚さとともに感じられた。
スマートペダルはメーターパネル下にある”S-PDL(ペダル)”でセットすることができる。”エコ”と”ノーマル”が選べ、”エコ”を選ぶと発進加速が弱められたいわゆる”省エネ”ドライブモードになり、”ノーマル”ではモーター走行が得意とするレスポンスの良い加速が得られる。ただし、回生=減速の強さは変わらない。街なかで、たとえば一旦停止の必要のない路地を曲る際や広い駐車場でスペースを探す際、または一般道でもアップダウンや緩やかなカーブがあるような道路でのブレーキペダル操作頻度が確実に減り、アクセルを緩めて減速、踏めば加速という動力の加減が可能だ。
とにかく楽ちんだし、ワンペダルの加減速の加減がわかると、そこにどちらかと言えばレベルであるがやや重いハンドル操作とともにリズム感のあるスマートなドライビングも楽しめそう。ロッキーのスマートペダルは普段使いをするユーザーが多いモデルらしく、日常に寄り添うような低中速走行時のワンペダルドライブが得意そう。ちなみにアクセルを緩めるだけで減速はするけれど、完全停止まではしない。ハイブリッドは音も振動も発進の滑らかさも有利。動力の質が上がった感じ。
動力性能的にはこのあと紹介する1.2リッターエンジンモデルもいいけれど、走りの質感まで考えたらやはりハイブリッドが有利。燃費も約10km/Lのアップとなる。