新開発CVTの採用など、機能面が充実しながらも低価格を実現
軽自動車の場合、CVTは従来のATよりも大きく重くなりがちで、過積載で使われることが当たり前な軽トラック/バンでは耐久性の面でも難しさがある。今回、FRの軽トラック/バン向けのCVTを開発するにあたっても、ユニットの全高を従来のAT並みにするのが難しかったというが、オイルストレーナーの配置や機能を工夫することでこれを克服。従来のATより幅はやや大きくなったものの、それ以外は同じサイズに収めることができた。また、従来のFF向けCVTと異なり、リバース側だけベルトを介さない駆動としてアイドラギヤで逆転させ、リバースギヤを通して軸がすべて固定される構造を採用。駆動ベルトの負荷を低減させることで耐久性を向上させたという。
CVTの変速フィールを嫌う人がよく指摘する「滑り感」についても「技術的に解消できた」とエンジニアは胸を張る。2022年度から小型貨物車に新しく適用される商用CAFE規制の基準値にも対応できている。
さらに、軽トラック/バンとして初めて電子制御式4WDを採用。用途に応じたスイッチ操作で2WD/4WDオート/4WFロックの3モードが選択可能となっている。4WDオートモードでは、路面状況に合わせた最適な前後駆動力配分を行うことで滑りすい路面での走行安定性を確保。
気になるバンの荷室容積については、従来型は車体を輪切りにすると台形型をしていたのに対し、真四角に近いスクエアな形状とすることで、上部の空間容積を拡大。リヤウインドウは昇降させるのをやめてレギュレーターの出っ張り部分をなくすなどして、内装の凸凹を徹底的に減らしたことも荷室の広さ拡大に寄与している。リヤウインドウをはめ殺しにした(換気用のポップアップ開閉は可能)のには賛否がわかれるが、おかげで荷室の広さはクラス最大となった(荷室長1915mm×荷室幅1410mm(4名乗車時)×荷室高1250mm)。荷室ナットの数は2倍に増やしてユーティリティ性を高めている。
ちなみに、従来型は乗用登録だったアトレーは、拡大した積載量と積載スペースを最大限に活用するため4ナンバー(商用車)化されている。この点を残念がる声もあるようだが、労働人口減少や働き手の多様化、Eコマース需要など、今の時代に合わせた設定というわけだ。
トラックのほうはラダーフレーム構造ということで車台はキャリーオーバーとなるが、荷台フロア長はクラスナンバーワンを誇る。ATは同じくCVTを初採用。従来型ではMT車のみに搭載されていたスーパーデフロックをCVTでも設定している。また、トラックの販売の約2割を占める大型キャビン採用の「ジャンボ」に廉価なスタンダードグレードが追加された。
さらに、電動格納式ミラーやキーフリードア施錠システム&プッシュボタンスタート、バンの両側スライドドアイージークローザーを軽トラック/バンとして初めて採用している。
「スマートアシスト」の全車速追従機能付ACCとLKC(レーンキープコントロール)を採用するなど予防安全機能も充実。この内容で価格はほぼ据え置きというのも嬉しい。
新型ハイゼットシリーズは、働くクルマとしてはもちろん、クルマ好きとしても純粋に興味を惹かれる内容が盛りだくさんなのである。