悪路走破性を重視した設計となっている
軽トラック/バンは高度成長期の日本のモーターリゼーションを推し進めた立役者となり、大企業から零細企業、個人事業者まで多くの日本のビジネスシーンで活躍した。大量に売れるから開発や競争も激しく、どんな時代にあっても常に前述した走りの性能が重視されてきたという歴史もある。商用/業務用車が大型化し、日本の道路の舗装率が高まった後もなお、軽トラック/軽バンは農道や林道などで使われることが多いため、今でも悪路走破性を重視した設計となっているのだ。
さらには、軽トラック/軽バンの多くは四駆性能も本格派クロカン並みのポテンシャルを備えている点に注目。昔から四駆にデフロック機構を備えるモデルが多く、泥濘路でスタックしない性能が磨かれてきた。スズキのキャリィは今でも四駆のMTモデルにデフロック機構を備え、ぬかるみなどで後輪の片方が空回りした場合に、スイッチをONにするだけで、もう一方のタイヤに駆動力を伝達する。
2021年12月にフルモデルチェンジした最新のハイゼットシリーズでは、新開発のCVTにもスーパーデフロック機構を設定。片側のタイヤが空転した時でもスイッチをONにすると、反対側のタイヤにも駆動力が伝わる。軽トラック/軽バンは、令和の時代でも半世紀以上も昔の昭和中期と変わらない未舗装路での走破性が重視されているのだ。
そして、軽トラック/軽バンは運転操作の面でも雪上で扱いやすいという利点もある。ステアリングのギヤ比は一般的な乗用車よりもスローなので、雪上では厳禁とされる「急」のつく操作になりづらい。滑りやすい路面でも安定性を確保するための穏やかな操舵入力がしやすいのだ。
もっというと、軽トラック/軽バンは路面インフォメーション伝達性に優れる利点も無視できない。車体のフレームは屈強だし、乗用車ほど柔らかいブッシュを使わず、シートも薄っぺらいのでクルマの挙動がダイレクトに感じやすいことも雪上での速さにつながる。昔は「未舗装路で軽トラックを乗りまわして運転の基礎を学んだ」というエピソードを持つプロドライバーが多かったものだが、ある意味、軽トラック/軽バンはラリーカーやレーシングカーと同じ原理で運動性能が高いといえるのだ。