FFの名手の歴史は50年以上前まで遡る
4)ホンダ N360
今に至るまでFFのイメージが強いホンダ。1967年に登場した最初の軽自動車であるN360からFFだったし、1972年の初の小型ハッチである初代シビックも当然FFだった。
2ボックススタイルとうまく組み合わせていたのは、初代ゴルフに通じる部分である。
5)マツダ・ルーチェ ロータリークーペ
すでに見たように、やはりFFは実用車向けの技術として採用されて進化してきた。当然ではあるのだが、マツダはなんと流麗なクーペ。それもロータリー搭載車が初となる。それが1969年に登場したルーチェロータリークーペだ。
ジウジアーロがデザインした伸びやかなスタイルとロータリーの組み合わせで、「ハイウェイの貴公子」というキャッチコピーが実に似合っていた。ただ、販売的には芳しくなく、マツダのFFとしてはやはりファミリアのほうが有名だ。
6)スズキ スズライト
日本のFF先駆者といえばスズキだ。1955 年のスズライトで初採用していて、これは日本車としても初採用となる。
採用した目的はやはりパッケージングやトラックの場合は積載性で、FFを採用していたドイツのロイトと呼ばれる小型車をコピーする形で開発を進めて形にした。ただ、技術的には未熟で耐久性などに問題があった。
番外)日野 コンマース
現在もなくはないが、耐久性などの問題でFFは商用車に適しているとはいい難い。しかし、積載性の高さは魅力で、そこにチャレンジしたのが1960年に登場した日野のコンマースというワンボックスだ。
デザインも丸みを帯びたものでかなり垢抜けていたが、やはりFFのウイークポイントが出て、人気は出なかった。
各社、個性派揃いだが、FRやRRが主流の時代にやっと出た感があるのも事実。現在はFFならではのクセを感じることはないが、創成期にあってはこのクセの解消が大きな課題だった。まず、問題は駆動と操舵を一緒に行うということで、車輪に付くジョイントが高性能なものを作ることができず、振動が出やすく、耐久性も低かった。それを解消したのが、ステアリングを切った状態でも滑らかに動く等速ジョイントで、これにより、飛躍的にFF車が増えた。
さらに左右のドライブシャフトを同じ長さにしないと、ステアリングを真っ直ぐにしていてもアクセルを踏むだけで曲がったり、暴れたりするトルクステアが発生してしまう。エンジンにパワーがあると発生しやすく、解消のためにはドライブシャフト長を左右で同じにすればいいが、スペースが限られているので苦労する部分でもある。
そのほか、重量物がフロントに集中するため、コーナーでアンダーステアが発生しやすいのもFFの特徴で、サスペンションの熟成など、その対処に苦労してきた歴史がある。今では違和感なくなったのはひとえに技術進化の賜物と言っていい。