これで「駐車の苦しみ」から解放される! ボッシュの「自動パーキングシステム」が今すぐ実用化希望レベルだった (2/2ページ)

車両側でeSIMと操作系のバイワイヤ化でどんなクルマにも実装可能

 まず仕組みはこうだ。今回の自動化ヴァレー・パーキングに用いる試験車のすべては、会場中央辺りの天井に設置された中央統合制御システム(会話中のふたりの頭上)から、WiFi経由でコントロールされている。

 進路上の障害物や異常検知は、車両ではなく天井に一定間隔で配置されたステレオカメラ(真下に二眼を向けたモジュール)で拾っている。そして通信情報と電気信号だけでアクセル&ブレーキ、ステアリングを遠隔操作する。車側のセンシング機器で判断する要素は一切ない。だから技術的にも法的にも、今のところ駐車場の建物内で無人で動かしてもOKなのだという。

「ガリバーのような大きな子供が、実車スケールだけどミニカーを手で動かしては、停めたり回送して遊んでいるようなイメージを思い浮かべてもらえれば」

 じつは1年半前、メルセデス・ベンツと組んでシュトゥットガルトの同社博物館の駐車場でボッシュが自動化ヴァレー・パーキングの実験を始めたときは、レーザー光線をガイドに進行と停止、駐車を制御していた。数ミリ間隔で停めることができ、乗員の乗り降りも必要ない分、スペースを有効活用できるとしていた。レーザー光線方式はどうなったのかを問うと、こんな答えが返ってきた。

「外部ステレオカメラを等間隔に並べて中央制御するほうが圧倒的に安いコストで実現できるので、早い段階でこちらの方式を優先しました。車両側カメラやセンサーの位置キャリブレーションを取る必要がなく、CMOSセンサーの精度と画像処理の速度次第ですが、遮る障害物さえなければ、ステレオカメラの配置間隔も拡げられます」

 そういっている間に、司会者が進路上にグレーの筒のようなものを置くと、床色とかなり馴染んで肉眼でも認識しづらいにも関わらず、デモ車両のフォーカスワゴンは手前で停止した。今回の実験では建物内ゆえWiFi経由で伝達していたが、当然5Gネットワークに置き換えることは可能で、車両側でeSIMと操作系のバイワイヤ化さえ済んでいれば、どんなクルマでも早々に実装は可能という。制御下で走らせる範囲や道路、速度域といったレベルも、設置環境や法整備次第で無論、上げて行けるという。

 自動化ヴァレー・パーキングはある意味、ごく初期段階の自動運転化と思えるだけではない。その興味深くも恐ろしい点は、デモ車両にメルセデスEQEのような高級車もあれば、フォード・フォーカスワゴン、ミニ・クロスオーバーまで、価格帯やクラスを問わずに実装&運用されていたことだ。

 要はエアバッグやABSがそうだったように、高級車セグメントから採用されて初期コストをスケールメリットで徐々に薄めながら、アクセプタブルになった頃にようやく経済的な小型車クラスに降りてくる……のではない。車型や車格に関わらず、物理的な追加装備は最小限のままコネクテッドでさえあれば、インフラ側の準備や法整備、そしてハッキング対策といった超えるべき障壁はあっても、技術的にはたいていのニューモデルで一気に実現可能なのだ。

 誰もぶつからない交通環境や社会、あるいは自動運転は、クルマ単体まかせではなく、通信環境と中央統合制御に多くを負うことになる。だからこそインフラや法整備の面から、自動車業界単体だけではなく、社会課題として建設的に解決するというスピード感が要る。そんな話になりつつあるのだ。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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