この記事をまとめると
■2サイクル方式のエンジンは現在ではほとんど見かけなくなった
■コンパクトで高出力を出しやすいユニットとして小型車や二輪車で重宝されていた
■世界の排出ガス規制により活躍の場は奪われて四輪車では完全に姿を消した
時代の流れに乗ることができなかった2ストエンジン
いまはほとんど見かけなくなったエンジン機関の方式に2サイクル(2ストローク)エンジンがある。かつては軽自動車やモーターサイクルといった比較的小排気量車のパワーユニットとして重宝がられたエンジンである。
2サイクル方式のメリットは、4サイクル方式が出力を得るのに4行程(吸気→圧縮→爆発→排気=クランクシャフト2回転)が必要なことに対し、2サイクル方式は、圧縮行程と排気行程(正確には掃気行程=ピストン上昇行程)、また爆発行程と吸気行程(クランクケース内への吸気、および1次圧縮=ピストン下降時)を同時に行うことで、クランクシャフト1回転で出力を得る各行程が完結することだ。もちろん、各行程での損失などを見込まなければならないのだが、乱暴に言ってしまえば、同じ排気量なら、2サイクルエンジンは4サイクルエンジンの倍の出力を発生することが可能ということになる。
ただし、2サイクル方式は、吸排気バルブの働きで各行程を完全に独立した状態とすることができる4サイクル方式と異なり、シリンダー内で排気行程と圧縮行程が同時に行われるため、排気ガスに吸気の未燃ガスが混ざったり、エンジンオイルが排出されたりと、排気ガス中に有害成分が含まれる特徴があった。
そのため、世界的に排出ガス規制(大気汚染防止)が注視されるようになった1970年代に入ると、次第にその数を減らすことになり、1980年に入ると四輪車では完全に姿を消す運命をたどることになった(船舶用、重機用のエンジンとして2サイクルディーゼルが存在するが、乗用車用とは別のシステムとして理解いただきたい)。