最強トヨタでも勝てなかった! 「後出しジャンケン」なのに売れなかったクルマ4選 (2/2ページ)

海を超えて欧州のライバルたちにも挑んでいた

3)ブレイド

 さて欧州志向のトヨタ車として日本向けに企画されたのが2006年に生まれた「ブレイド」である。フォルクスワーゲン・ゴルフに代表される欧州のCセグメント・ハッチバックに流れているユーザーを、トヨタに引き戻そうという狙いは明確で、基本グレードには2.4リッターエンジン、ブレイドマスターと名付けられた上級バージョンには3.5リッターV6エンジンが搭載された。

 Cセグメント・ハッチバックにV6エンジンを載せるという商品企画は、ゴルフVR6やゴルフR32の影響を受けたことは間違いなく、そうしたモデルよりも排気量が大きい2GR-FEエンジンは最高出力280馬力とパワフル。シャシーもレベルアップされたもので、リヤサスペンションにダブルウイッシュボーンを採用していたのは、このクラスとしては贅沢なもので、ゴルフに劣らないスペックではあった。

 しかし、積み重ねた伝統という部分では勝負にならず、また、縮小する日本市場向けに専用モデルを続けるのも難しいということで、これまた一代限りで消えることとなってしまった。

4)カルディナ

 このようにあっさりと諦めることもあるトヨタだが、なかには2代に渡ってライバルの市場を狙いにいったこともある。その代表例といえるのがステーションワゴンの「カルディナ」だ。

 1992年に誕生した初代は2リッターガソリンエンジン搭載グレードを中心としたステーションワゴンで、間違いなくライバルはスバル・レガシィツーリングワゴンだった。たしかにレガシィの量販グレードは2リッター、1.8リッターのNAエンジン車であり、当時はレガシィもFFが広く用意されていた。カルディナが同様のラインアップでライバルを追い落とそうとしたのは理解できる。

 しかし、レガシィは2リッターターボのGTグレードによってイメージを高め、日本市場での存在感を増していった。レガシィ、インプレッサによりWRCに参戦し、そのラリーカーと同じ水平対向4気筒ターボというのもファンの心をくすぐったものだ。

 そこでトヨタは、1997年にフルモデルチェンジした2代目カルディナでレガシィGTにガチンコ勝負を挑む。トヨタのWRCマシンのベースとなっていたセリカに搭載された2リッター直列4気筒ターボ「3S-GTE」をカルディナのトップグレードに搭載したのだ。駆動方式は4WDで、このあたりもレガシィツーリングワゴンへの対抗心を感じさせたが、レガシィツーリングワゴンの2リッターターボは当時の自主規制値である280馬力に達していた。実際のパフォーマンスとしては同等レベルだったかもしれないが、カルディナの2リッターターボが260馬力というのは見劣りしたのは否めなかった。

 徹底的にレガシィに対抗してパフォーマンスを磨いていれば事態は変わったかもしれないが、カタログスペックでの20馬力差は当時のユーザーマインドからすると実際よりも大きな差として捉えられ、カルディナはレガシィをキャッチアップすることなく、この2代目を最後に消滅してしまった。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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