フェラーリは世界一美しくなくてはいけないクルマだ
550マラネロから始まる、一連のフロントエンジンV12ベルリネッタも、すべてデザイン的にはいまひとつだ。550マラネロとそのマイナーチェンジ版である575Mは、フォルムもパネル面も大味で、あの雄大なサイズを活かしきっていない。
それに続く599GTBも、サイズばかり大きくて、それを持て余してしたようなでっぷりとした造形になっている。
F12ベルリネッタは、サイドの折れ曲がったインバースが、まったく無意味に煩雑に見える。現在の812スーパーファストは比較的引き締まっているが(サイズもやや縮小された)、サイドに斜めに鋭く跳ね上がるインバースはやはりうるさいし、リヤの造形も複雑すぎるように見える。
V8ミッドシップ系では、308/328は大傑作だったが、348はやや豊潤さに欠け、全世界で大人気のF355も、フロントエアダム部など細かい造形に未成熟な部分が散見される。
360モデナは非常に斬新なフォルムだったが、パネル面がたるんで締まりが足りなかった。F430はそれを細部で補おうとしたが、逆に煩雑になった。
458イタリアは久しぶりの傑作だったが、488はその改悪版に過ぎず、F8トリブートも同様。
続く296GTBは、全体に非常にシンプルで滑らかになり、久しぶりのヒット作だが、こうして見ると、フェラーリにもデザインを失敗したモデルはたくさんあるし、逆に成功しているモデルのほうが少ない。
私がフェラーリのデザインに厳しいのは、フェラーリを崇拝するフェラーリオーナー(現在の愛車は328GTS)だからで、同時にフェラーリは世界一美しくなくてはいけないと思っているからだ。他人事じゃないから、欠点が思い切り目についてしまう。
フェラーリを買わない人は、FFを見て「あんなフェラーリに乗るなんてカッコイイ!」と思ったりするのでしょうが、人生賭けて買うとなると、なかなかそうはいきません。