衝撃サプライズで突如16台のバッテリーEVを披露! トヨタが世界の自動車界にビックバンを巻き起こした (2/2ページ)

レアアースの調達も万全を期している

 それにしてもサプライズで披露したトヨタ・エンブレムをつけたBEVは多用なニーズに応えるモデルぞろいだ。

 FJクルーザーを思わせるSUVやピックアップトラックは北米市場向けだろう。GRエンブレムをグリルに備えたスポーツカー、黄色化粧プレートをつけた軽自動車を思わせるコンパクトな商用車は日本市場を意識しているのではないだろうか。ミドル級の商用1BOXも用意される。また、欧州で受けそうなスタイリングのSUVはスモールとミドル級の2タイプの開発が進んでいるということだ。

 2030年に350万台のBEVを売るというのはたしかに、これまでのイメージからするとトヨタが一気にBEV寄りになるといえるが、比率でいえば3分の1に過ぎない。残りの3分の2はエンジン車であったり、ハイブリッドカーであったりするわけだ。トヨタからエンジンはまだまだ消えないし、モデルによってはエンジンとBEVが共存するというケースもあるだろう。

 このように多量のBEVを売るという目標を掲げるには、開発する技術だけでなく、生産できる目途が立っていなくてはならない。とくにモーターやバッテリーに使うレアアース・レアメタルの調達能力は、BEVを量産するにあたって高いハードルとなる。ましてトヨタの規模であるのだから尚更だ。

 その点については、グループ企業の豊田通商が2006年から動いており、安定供給が可能な目途が立っているという。まさに文句のつけどころのないトヨタのバッテリーEV戦略といえる。

 それでも前述したようにエンジン車やハイブリッドカーを残すのは、エネルギーミックス(発電比率)によってはカーボンニュートラルに対してBEVが最適解とはならないケースもあるからだ。自動車メーカーがひとつの解を示すのではなく、多様な選択肢を示すことが重要というのがトヨタのスタンスといえる。その選択肢に、トヨタが世界をリードする水素燃料電池車も含まれるのは当然だ。

 いずれにしても、欧州や中国が政策的にBEVに向かっているのは間違いない。トヨタはそうした市場に合わせた商品を十分以上にラインアップするという姿勢を見せた。まさに巨人が動き出したのだ! 世界的にBEV市場のパワーバランスが変わっていくのは確実だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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