クルマの塗装自体での撥水は技術的に可能! それでもワックスやコーティング前提の塗装しか採用されないワケ

この記事をまとめると

■クルマにワックスやコーティングをかけると、ツヤや撥水効果が得られる

■塗装自体にこのような成分を配合することはできないのか

■可能ではあるが、採用されないのには事情がある

日産には「フッ素樹脂塗装」が存在した

 ワックスやコーティングをかけること自体は、クルマ好きにとってとても楽しい時間だったり、作業ではある。ただし、セコセコとかけているときにふと思うのが、塗装自体に撥水効果をもたせられないかということだ。しばらくすると落ちてしまうような被膜をわざわざ塗装の上に塗るのではなく、塗料の成分として撥水剤みたいなものを配合すればいいのではないだろうか?

 まず塗料にそのような成分、たとえばフッ素を配合するのは可能で、フッ素樹脂塗装というのが日産に存在した。フッ素樹脂を配合した塗装は1988年のローレルが世界初で、1990年に入ると高級車だけでなく、実用車にも採用されていた。SFC(スーパー・ファイン・コート)やSFHC(スーパー・ファイン・ハード・コート)と呼ばれる塗装で、リヤウインドウにステッカーが貼ってあったのを覚えている人もいるかもしれない。また専用のワックスもオプションで売られていた。

 いずれにしても撥水効果がある塗装というのは可能ということになる。ただ、別途コーティングしたときのようにコロコロと水玉が滑り落ちるほどまで撥水はしなかったのも事実で、現在ではそのような効果を謳う塗装はない。

 なくなってしまった理由としては、撥水性の問題だけでなく、コストが高いのもメーカーとしては負担が大きかった。撥水させることで塗装の劣化も抑えせるというのも特徴のひとつとしていたものの、2000年代に入ると塗装の品質自体がよくなって、わざわざ撥水させて汚れを寄せ付けなかったり、輝きをキープする必要もなくなってきた。

 また、最初から撥水しているとディーラーでのボディコーティングが売れなくなってしまうという事情もある。ボディコーティングというのは価格が高いうえに粗利が大きくて売上げ的においしいメニューのひとつ。さらに、長期間キープさせて保証を付帯させるためには定期的なディーラーへの入庫が条件なことも多いため、これもまた売上に結びつく可能性がある。つまり最初からわざわざ撥水させるよりも、ディーラーでコーティングメニューを販売したほうが、売る方のメリットが大きいと言っていいわけだ。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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