強く引くと「ガッ」とひっかかる謎現象は何? クルマのシートベルトに備わる安全機能「ELR」とは (2/2ページ)

徐々にシートベルトを緩めていく機能も

 もう1つ、フォースリミッター(ロードリミッター)機構というのもあります。これは、プリテンショナーによって乗員のからだを拘束したあとに、一定の荷重がかかるとそこから徐々にシートベルトを緩めていくことで、荷重を適切なレベルに抑えて乗員のからだにダメージを与えないようにして、乗員を保護するという機能です。

 普段、なにも考えずに使っているシートベルトには、こんなにたくさんの安全機能が仕込まれていたんですね。

 ちなみに、現在の新型車には採用されていませんが、2000年〜2010年頃までに製造されたクルマの多くには、後席シートベルトに「ALR(オートマチック・ロッキング・リトラクター)付き3点式シートベルトが採用されていました。これはまだISO-FIX式のチャイルドシートが主流になる前に、シートベルト固定式のチャイルドシートをより確実に固定するために考案された機構で、後席シートベルト全量を引き出すとロックし、巻き取る方向にしか動かなくなっています。

 そのため、正しく使用すればチャイルドシートを最大の拘束力で固定することができて安心なのですが、この機構にはリスクもあり、子供などがチャイルドシートで遊んでいて誤ってロックさせ、締め付けられてしまうという事例が発生。最悪の場合には命の危険が懸念されるということで、2000年頃から2010年頃までに製造されたクルマにお乗りのかたは、十分に扱いに注意してほしいと思います。

 また法律では、前席だけでなく後席のシートベルト着用も義務付けられており、違反者には罰則もあります。メーカーは自主的に、シートベルトを着用していない座席を感知するとアラームを鳴らしたり、警告灯が点灯したりする装置を装着してきましたが、2020年9月以降に販売される乗用車にはアラーム装置の装着が義務化されています。

 クルマに乗る人はドライバーじゃなくても、全員が事故に遭うリスクを抱えており、シートベルトはそのリスクから身を守るために、誰もが簡単に、無料で、今日からできる安全対策です。「ちょっとそこまでだから」「後ろの席だから」と軽視せず、「乗ったら締める」を全席で習慣にして、交通死亡事故ゼロ社会を目指しましょう。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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