やっぱりいまのクルマは「個性がない」! 唯一無二感たっぷりの愛され国産車4台 (2/2ページ)

燃費が極悪だろうが走らせるのが難しかろうが関係なかった!?

2)マツダ・ユーノスコスモ

 そんな実質的な専用エンジンを与えられた90年代カーとして思い出すのは、マツダのフラッグシップクーペ「ユーノスコスモ」だ。上級グレードに搭載された20B型3ローターエンジンには大小のターボチャージャーを組み合わせたシーケンシャル過給システムが採用され、レシプロでいえば12気筒に相当すると評された3ローターの滑らかなパワーフィールをスポイルすることなくフラッグシップにふさわしいパワーを実現していた。

 そうしたスムースネスについては現在のパワートレインにおけるトレンドと重なる部分もあるが、一方で環境性能については完無視とさえいえるセッティングだったのも事実。さすがに2km/Lが当たり前というのは都市伝説としても、丁寧に乗っても10km/Lに達することはないレベルの燃費性能は2020年代には社会的に許されないかもしれない。

 その部分で改善が難しいエンジンだったことも、20B型3ローターエンジンがわずかな期間で消えてしまった理由だが、だからこそ今のクルマでは真似できない魅力を持っている。

3)スズキ・カプチーノ

 話かわって90年代は軽自動車に2シータースポーツカーが突如として現れた時代でもあった。その中で、いまでも貴重なパッケージングといえるのがスズキ・カプチーノだ。その後、ミッドシップの軽スポーツは復活したが、FRの国産軽2シータースポーツという分類においてはカプチーノが最初で最後のままだ。

 クローズドからフルオープンまで4通りのルーフスタイルが楽しめるというアイディアもユニークだったが、あらためてカプチーノの走りを思い出せば、よくもまあ一般向けに販売したと思うほどスリリングだった。

 たしかに四輪独立サスペンションの出来はよかったが、それでも2060mmという超ショートホイールベース(当時のライバルとされたビートやAZ-1は2200mm以上だった)で、なおかつ一切の電子制御がないシャシーは腕を要求するもので、並みのドライバーであれば常に緊張を強いられるほど難易度の高いものだった。もっとも難易度だけでいえばAZ-1のほうが上だったかもしれないが……。

 そうはいってもオーバーステア・モードに入れることが厳禁(そのままスピンしてしまう)なAZ-1とは異なる、スリルを日常的に味わえるキャラだったのがカプチーノの特徴。けっしてペースアップしているつもりでなくとも気付けばわずかにカウンターを当てているなんていう走りを許容できるドライバーだけがカプチーノを楽しめた。電子制御が当たり前になってしまった現代では信じられないかもしれないが、うまく乗りこなしたときの満足感は、現代のスポーツカーでは味わえないものだったのも事実だ。

4)トヨタ・エスティマ

 1990年代を代表する個性的モデルはスポーツカーだけに非ず。最後に「天才タマゴ」ことトヨタの初代エスティマを紹介したい。

 キャッチコピーはラウンドしたスタイリングに由来するもので、商用車ベースではないスライドドアのミニバンというジャンルのはしりとなった1台。さらに、エンジンをミッドシップに積むというパッケージングもユニークだった。

 基本はミッドシップの後輪駆動(四輪駆動もあった)。それゆえ高速道路での走行感覚は現在のミニバンとは完全に異なるものだった。とくに当時のライバルがいずれも商用車ベースのプラットフォーム由来だったこともあって初代エスティマの走りは際立っていたし、それはミニバン・カテゴリーへの期待値を上げる理由にもなったという印象がある。

 結果的に、その後は乗用車系FFプラットフォームを活用したミニバンがトヨタでも主流となり、ミニバン専用設計のミッドシップシャシーというのは初代エスティマだけとなった。ハンドリングに魅力を持つミニバンが一代限りで消滅してしまったのは残念だが、だからこそ現在のクルマにはない魅力を持つモデルとして自動車史に残り続けるだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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