結果的に「魂動デザイン」は大成功……! とまではいかなかった
そして売れ行きは伸び悩む。マツダが魂動デザイン+スカイアクティブ技術に基づく先代CX-5を発売する前の2010年は、マツダの国内販売総数は22万3861台であった。それがプレマシー、ビアンテ、ベリーサなどを廃止した後の2019年は、魂動デザイン+スカイアクティブ技術の新型車を続々と投入しながら20万3576台に下がっている。直近の2020年はコロナ禍の影響もあって17万7043台だ。
販売店はユーザーのニーズを良く知っているので、2019年頃には「トヨタと提携したのだから、ヴォクシー&ノアのOEM車でも良いから、とにかくミニバンを販売させて欲しい。そうしないとプレマシーやビアンテのお客様が離れてしまう」という切実な意見が聞かれた。
メーカーは「3列シートSUVのCX-8は、プレマシーやビアンテのお客様にも販売できる」としていたが、CX-8は全長が4900mmと長く、価格はプレマシーの2倍近い。ミニバンのユーザーにCX-8への乗り替えを提案するには無理があり、販売店ではヴォクシー&ノアのOEM車を希望したわけだ。
そして魂動デザインの課題は、現行マツダ2(発売時点ではデミオ)の登場直後に行われた市場調査でも明らかになった。マツダ2はコンパクトカーだから、一般の女性にも聞き取り調査を行ったが、「このようなスポーツカーみたいなマツダ2は、私には運転できない」という意見が多く聞かれた。魂動デザインは、好みが明確にわかれ、拒絶するユーザーが少なくないことが明らかになった。
この問題を解決するため、「今までマツダ車に興味のなかったお客様に買っていただきたい」という思いで開発されたのがMX-30だ。ボディサイズはCX-30とほぼ同じだが、外観は水平基調で内装にはコルクなども使われ、従来の魂動デザインとは異なる柔和な雰囲気を感じさせる。
しかしサッパリ売れていない。理由は「今までマツダ車に興味のなかったお客様に買っていただきたい」という思いが伝わらず、中途半端なクルマになっているからだ。とくに観音開きのドアは、装着した狙いがわかりにくく使い勝手も悪い。
マツダの目的を達成するなら、2002年に発売された2代目デミオ・コージーのように、リラックスできる穏やかなクルマ作りをわかりやすく表現すべきだった。
従来の魂動デザインとは違う、まったく新しいシリーズを打ち出さないと、マツダの販売不振は解決しない。マツダがミニバンから手を引いた痛手は大いが、それを克服できる新しいクルマ作りを実現できたなら、さらに大きな成果をマツダへもたらすに違いない。