いまモデューロXの中古車価格は400万円を超える
本来ならば2021年3月12日に生産終了を発表した時点で、2021年5月末日という具合に期限を決めて、通常の受注を続けるべきだった。期限までに契約した顧客には、仮に納期が伸びても必ず納車すれば、不満は生じない。「S660が欲しいのに買えない」という悲しい思いをさせることはなかった。
この失敗を多少なりとも補うのが11月に公表された追加生産だが、受注を中止したのは3月末だから、追加を発表するまでの時間が長すぎた。さらに50台は抽選で購入できるユーザーを選ぶという、これまた失礼な売り方をしている。
以上のような失敗により、S660の中古車価格は高騰した。αの新車価格は232万1000円だが、走行距離の短い中古車は、300万円以上のプレミアム価格で販売されている。モデューロXの新車価格は315万400円だが、中古車価格は400万円を軽く超える。S660は中古車市場まで混乱に陥れてしまった。
最近のホンダは、S660に限らず生産と販売面が荒れている。ヴェゼルの納期はコロナ禍の影響でパーツが不足しているとはいえ、大半のグレードが約8カ月まで遅延した。PLaYはさらに納期が長く、今は受注を中断している。
納期遅延の背景には、狭山工場の閉鎖に伴い、ヴェゼルの生産を鈴鹿製作所に移したことも影響を与えた。鈴鹿製作所ではN-BOXなどの軽自動車やフィットも生産しており、ヴェゼルまで加われば生産が過密になるからだ。
また狭山工場の閉鎖により、売れ筋価格帯が350万円を超えるホンダ車ではもっとも多く売られるオデッセイの廃止も決まった。
これらの問題とS660の混乱は、根底では繋がっている。商品自体はいずれも優れているが、生産と販売がまったく制御されていない。ホンダの内部からも「上層部はお客様のことを本気で考えていない」という批判が聞かれる。ホンダは販売店の声にしっかりと耳を傾け、顧客の満足度を高める必要がある。