ニッポンのファンは「過度な期待」は禁物! アメリカで復活する「インテグラ」の「正統後継」じゃない立ち位置 (2/2ページ)

そもそもインテグラってどんなクルマだった?

 そもそもアキュラ・インテグラにおいては運転席側(左側)ヘッドライト下のバンパー面にINTEGRAという車名が彫り込まれている。

 これはDC2型インテグラの丸目4灯ヘッドライトのモデルに使われていた特徴的な処理である。インテグラの復活といっても、最後のモデルであったDC5的な世界観を受け継ぐというよりは、インテグラの歴史そのものをリスペクトしたニューモデルと理解すべきだろう。

 その意味では、新生インテグラが5ドアクーペになることはヘリテージ的にも正しいといえる。

 あらためてインテグラの歴史を振り返ると、最初にインテグラという名前を使った四輪車が誕生したのは1985年7月で、そのときの車名は「クイント・インテグラ」というものだった。

 それ以前に5ドアハッチバック専用ボディの「クイント」というモデルがあり、それが初めてのフルモデルチェンジする際にクイント・インテグラに改名したという経緯がある。3ドアハッチバックなど複数のボディ形状をラインアップに加える手前、5を意味するクイントという車名では都合が悪いという判断だったのだろう。

 このクイント・インテグラはリトラクタブルヘッドライトのモデルであり、また初めてアキュラで売られたインテグラにもなった。

 アメリカではクイントの名前はつかなかったとはいえ、5ドアであることはインテグラのルーツからすれば由緒正しいボディ形状という見方もできる。

 さて、アキュラとして復活するインテグラについては、1.5リッターVTECターボと6速マニュアルトランスミッションによるパワートレインを積むと発表されている。トランスミッションにはLSDも備わるという情報もあるが、それがメカニカルLSDなのか、ブレーキ制御を使ったLSD効果を指しているのかは現時点では不明だ。

 また、公表されたプロトタイプでは前後に19インチタイヤを履き、ホイールの中には大きなブレンボ製キャリパーも確認できるが、これも量産モデルに採用されるかどうかは不明。ルックス的にはブレンボ製キャリパーは有効だが、1.5リッターVTECターボから想像できるパフォーマンスを考えると、ブレンボのブレーキシステムはオーバースペックかもしれない。

 なにより、1.5リッターVTECターボと6速MTの5ドアハッチバックといえば、日本でも発売されている現行型シビックと共通であり、ボディ形状からしてもシビックをアキュラ仕立てにした実質的な兄弟車と捉えるのが妥当だろう。

 アメリカではシビックが非常に多く売れている。だとすれば、シビックのプレミアムバージョンにもマーケットがあり、それをアキュラ・ブランドで展開するというのは、マーケティング的にまったくもって正しい判断といえる。

 逆に、日本ではホンダのクーペ的なハッチバックモデルを求めるユーザー層の規模感を考えると、シビックだけで十分にカバーできるといえるし、あえてインテグラを導入する必然性もない。残念ながら、帰ってきたインテグラを日本で見る可能性はほとんどないといえるだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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