「女性向け」に作られていないことが大前提
これはもう、かわいいとかどうとかではなく、最近の女性は「女性向け」と言われること、そのものがもうイヤなのです。ジェンダーレスやLGBTQなどが広く認知される社会情勢などの影響もあると思いますが、「女性の皆さん、こんなの好きでしょ?」とあからさまに言われているような、女性らしさを押し付けられているような感じが、そもそも違和感アリアリ。女性はスカートを履くべき、パンプスで出勤するべき、化粧をしっかりするべき、といった古い概念はもうウンザリなのです。ましてや、高い買い物であるクルマともなれば、どこの誰ともわからないオジサンが「女性に乗って欲しいと思って作った」というだけで引いちゃうのかもしれません。
もちろん昔から、女性向けと言われる商品に嫌悪感を抱く女性たちは一定数いましたし、とくに女性向けのクルマとは謳っていないけど、女性人気が目立つクルマというのもありました。たとえば日産のラシーン。「僕たちのどこでもドア」というドラえもんのCMや、コンパクトサイズのクロスオーバーSUVという親しみやすさ、ペールカラーをうまく取り入れたセンスのよさが女性にウケていましたね。そしてスズキ・ジムニーやトヨタ・ランドクルーザーといった、タフな本物感のあるSUV。これも女性人気が根強いです。
また輸入車では、MINI、ビートル、500も女性からの支持が厚いモデルたち。これらは一見、可愛いデザインともとれますが、ただ可愛いだけじゃない、高い走行性能や革新技術などを備えた実力派モデルでもあるところがキモです。もちろん、50年以上の歴史を継承しているという誇りや、世界中の誰もが知っているというブランド力も大事な要素となっています。そういった意味では、日本のモデルでいうとN360のコンセプトを継承した軽自動車のホンダN-ONEや、世界に先駆けてハイブリッド車として世界の注目をさらったプリウスに女性ファンが多いのも納得ですね。
また近年、大人セクシーなデザインとして女性人気を集めているのが、マツダのモデルたち。とくにCX-30はコンパクトなSUVとしては類を見ないほどの艶やかなデザインや、モードなカラーラインアップ、ホワイトレザーのうっとりするようなインテリアで、若い女性たちが憧れるモデルとなっています。
こうして見てくると、今の女性たちがクルマに求めているのは、やはり「女性向け」に作られていないことが大前提。可愛くしようと思ってデザインしたわけではないけど、結果的に可愛く見えるクルマとか、見るからに可愛いのではなくふとした角度やパーツの一部が女心をつかむような、「私だけが知ってる感」も心をくすぐるのではないかと感じます。MINIやジムニーなどを見ても、決して「女性はこういうのが好きだから」という理由でデザインはしていません。でも、結果的に可愛いし、「私はこの丸いメーターが好き」「私はカクカクしたルーフがいい」「私はこのユニオンジャックのテールライトがたまらない」といった、自分だけの推しポイントがいろいろと見つかります。
ということで、押し付けられたら大迷惑な「女性らしさの固定概念」や、「可愛く見せようとするあざとさ」、「薄っぺらなデザイン」の3つは、女性から敬遠されるクルマにありがちなものと言えそうです。