この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツSLRマクラーレンはトリプルコラボによって誕生したスーパーカー
■伝説の名車メルセデス・ベンツ300SLRのアイコンを各所に施したモデル
■75台限定のSLRマクラーレン・スターリング・モスでモデルライフを終了した
メルセデス・ベンツとAMGとマクラーレンによる共同開発車
ついにメルセデス・ベンツからも、スーパースポーツが誕生するのか。そのような期待感が一気に高まったのは、1999年のNAIAS(デトロイト・ショー)で、「ビジョンSLR」とネーミングされたコンセプトカーを目の前にした時だった。
ビジョン、すなわち未来像が現実へと進化を遂げるのは、メルセデス・ベンツにとっては珍しいことではなく、しかもそれが1955年に登場した3リッター仕様のGPマシン、「300SLR」の名を受け継いだものであるとすれば、それを再び歴史の中に葬り去ることはないだろう。その期待感だけで、世界のメルセデス・ベンツ、そしてスーパースポーツのファンは興奮を抑えきれなかった。
だが、プロダクションモデルのSLRが正式に発表されるまでには、それからさらに4年という時間を必要とした。メルセデス・ベンツはSLRのプロジェクトを中止してしまったのか。一部にはそのような悲観的な話も流れるようになったが、それはあくまでも噂のひとつにすぎなかった。
SLRはメルセデス・ベンツ、メルセデスAMG、そしてイギリスのマクラーレンとの3社による共同開発車であり、そのために、そして究極のパフォーマンスときわめて高い趣味性を兼ね備えたモデルへと仕上げるために、通常よりも長い開発期間を必要としたのである。
車名はSLRマクラーレンと決定し、実際にSLRのファーストモデルがワールドプレミアされたのは、2003年のフランクフルト・ショー。2001年のNAIASでは、ビジョンSLRロードスターの発表も行われていたから、将来的にはオープンモデルが追加されることも、この段階で容易に予想できた。
SLRマクラーレンがワールドプレミアされた瞬間の興奮は、個人的にも今でも忘れることができない体験だ。ロングノーズ&ショートデッキのシルエットは、ビジョンのそれからほとんど変わることはなく、ステージに向かって駆け上がったその先には、かつて1955年のミッレミリアを驚異的な速さで制覇した、ゼッケン722番の300SLRが最新のSLRマクラーレンを待ち構えていた。SLRはここに、約半世紀の時を経て復活を遂げたのだった。
SLRマクラーレンのエクステリアデザインは、現代の目で見ても非常に魅力的なフィニッシュだ。ビジョンからの大きな違いといえば、フロントフェンダー上に大型のエアアウトレットが採用されたり、またその下にエキゾーストシステムが導かれたりしていることなどが代表的なところ。これとて300SLRのファンには歓迎すべきポイントだ。