スモールカーに4.7リッターV8をぶち込んだ怪物
さてIOCである。代表的なIOCといえば、本稿の冒頭でもちらりと触れた「アストンマーティン V8シグネット」だろうか。
V8ではないほうのアストンマーティン シグネットは、トヨタ iQをベースとする英国アストンマーティンの小さな高級車。トヨタから供給されたiQの完成車を一度バラし、1台あたり約150時間かけて、完全手作業によって組み立てられたモデルだ。
……その時点ですでに若干のIOC臭がただようシグネットではあるが、V8シグネットはそこにヴァンテージS用の4.7リッターV8エンジン(最高出力430馬力!)を移植したワンオフモデル。
0-96km/h加速は4.2秒で、最高速度は274km/hとのこと。アストンマーティンいわく「ヴァンテージSよりも速い究極のシティカー」と言っているそうだが、究極のシティカーではなく「究極の偉大な馬鹿グルマ」の間違いではないかと、筆者などは思うのである。
またこれも冒頭で触れた「日産 マーチ ボレロA30」も、相当なIOCだ。
日産グループの特装車メーカーであるオーテックジャパンの創立30周年を記念して2016年に企画/製作/販売されたマーチ ボレロA30は、トレッドを約90mm拡大したうえで、超絶張り出した前後オーバーフェンダーを採用。
そしてノートNISMOにも使われたHR16DE型エンジンに専用パーツを組み込み、現代の名工たちが手組みした最高出力150馬力の1.6リッター直4エンジンを搭載するなどした、30台限定生産のコンプリートカーだった。
エンジン内部には軽量・高剛性化を図った専用のムービングパーツが使われ、手作業によるポート研磨も行われたマーチ ボレロA30は「現代の名工の無駄使い」と思えなくもないわけだが、30台はあっという間に完売したのだから、これで良かったのだろう。