マニアすら言葉を失う自動車メーカーの狂気! 敬意を込めて呼ぶ「おバカー」の世界 (3/3ページ)

室内にV10エンジンが突き出したミニバン!

 日産系のIOCといえば、「ジュークR」にも触れねばなるまい。

 2011年に日産欧州法人のワンオフプロジェクトとして発表されたジュークRは、小型SUVであるジュークにR35型日産 GT-Rの中身をブチ込んだIOCだった。

 プロトタイプに積まれたVR38DETT型3.8リッターV6ツインターボは最高出力480馬力だったそうだが、市販バージョンでは545馬力になったとのこと。GT-Rと同じトランスアクスルで、6速DCTのギヤボックスはトランクフロアの下にある。2015年6月にエボリューション型として登場した「ジュークR 2.0」は599馬力というさらにトンパチな最高出力をマークしたそうだ。

 ……先ほどから私は「だそうだ」とか「とのこと」など、伝聞調でのみ書いているが、当たり前である。わずか数台しか製造されなかった超絶IOCに、筆者のごとき無認可モグリ業者が試乗する機会など、あるはずがないではないか。

 とはいえジュークおよびジュークNISMOと、R35 GT-Rには当然ながら試乗したことはあるので、「あれがアレに移植されたのか……」とイメージし、その結果として目まいを起こす程度のことはできる。

 フランス共和国においてもIOCは発見可能だ。

 フランスのルノーが販売していた「アヴァンタイム」は、どこからどう見てもミニバンなのに、じつは2ドアのセンターピラーレスハードトップであるというトンパチな車だったが、ジュークRやマーチ ボレロA30のトンパチさと比べてしまえば「大したことはない」と見ることもできる。

 ルノーにおける最強IOCは「エスパス F1」だろう。

 アヴァンタイムのベースでもあった欧州車初のミニバン「エスパス」の生誕10周年を記念し、1992年のF1チャンピオンに輝いたウィリアムズ・ルノー FW14BのRS4型3.5リッターV10エンジンを、エスパスのミッドにマウントしてしまったというIOCだ。

 となれば、「さすがにエスパスの2列目と3列目シートは撤去され、2シーターになってるのかな?」と思うわけだが、エスパスF1には2列目シートがしっかり用意されている(さすがに3列目は撤去された)。だが2列目に置かれた2つのバケットシートの間には、ウィリアムズ・ルノー FW14BのV10エンジンが顔をのぞかせているという超絶(?)レイアウトだったのだ。

 F1用の3.5リッターV10エンジンは最高出力800馬力だったそうで、0-100km/h加速は2.8秒、最高速度は300km/hオーバーとのこと。しかし2台しか製造されず、市販もされなかったため、当然ながら筆者はエスパスF1の運転などしたことがない(それどころか、見たこともない)。

 しかし今、アラン・プロストさんがサーキットでエスパスF1を激走させている動画を見ることはできる。

 その素晴らしすぎる走りっぷりを見て、そしてその超絶快音を聴くにつけ、「やはりこの手のクルマは、“おバカー“ではなく“IOC(Idai-na Obaka Car)”と敬意をもって呼ぶのが正解だ……」と、あらためて思うのだった。


伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

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