CVTはダイレクト感に優れる
じつはこのサーキット走行に備えてVDCはすべてオフにしていて、これをオンにしておけばスピンするようなことはないが、介入が比較的早く、状況によってはスライドしてからかなり強い介入が入りギクシャクした感じが発生してしまうためVDCはオフにして自分でコントロールするような乗り方がむしろ望ましいと言える。
その結果ハイスピードコーナーや低速コーナーに関わらず状況に応じて非常にオーバーステアになったり、パワーオンでは強いプッシュアンダーステアが出るといったような状況だ。ただプッシュアンダー状態でもステアリングを切り回していくとトルクスプリット前後のトルク配分が45:55ということで、リヤ駆動よりなのでパワーオーバーステア傾向に若干移行するような場面もある。このようにオーバーステアが出たりアンダーステアが強まったり、あるいは逆ニュートラルステアであったりといったように、ステアリング特性には一貫性がなく、状況に応じた変化が大きいというのが今回とくに印象に残ったところだ。
これはボディーのサイドガーニッシュ、ホイールハウス周りに配された新しいホイールアーチモールのカバーなど、ブラックの樹脂成型された部分にディンプル加工がしてあり、これらの空力効果が非常に大きいという側面があり、ステアリングが直進状態の時には空気が綺麗に流れてそれらの効果が上がり、逆にコーナーでステアリングを切ってタイヤのホイール角度が付くと空気の流れが変わりディンプル効果が変化してそれが車両特性に影響を与えるというようなところもあるのかもしれない。
ステアリングのレスポンスやパワー、それにシフトプログラムなどが変化することによってハンドリングに一貫性がなくなってしまうところは少し疑問に感じるところだ。従来モデルのようにアンダーステア一辺倒であるのも困るが、もう少しドライバーが自ら意思判断してクルマの姿勢を自分の求める姿勢に持ち込めるようなクルマとしての受け身のバランスコントロールがさらに高まることを期待したい。
CVTトランスミッションには8段のステップ比が切られている。ノーマルモード以下では基本的にCVTなので無段変速だが、スポーツモード以上ではこの8段変速が常に作動して8速ギヤとして走っている感覚になる。シフトアップはコーナーの横Gが強い時などには抑えられてギヤホールドするし減速時にはブレーキの制動の強さに応じてシフトダウンをブリッピングを伴って行うので、まるでツインクラッチのDCTに乗っているかのような錯覚を覚えるような仕上がりであった。ただマニュアル操作をしても2速あるいは1速といった低速ギヤに切り替える時は車速が十分に落ちていないとはじかれてしまうので、その辺はCVTの弱さが少し出ているところだと言える。
このCVTはトルコンを介して作動しており、トルコン内にロックアップクラッチも付いているのでダイレクト感は十分にあるし、従来のCVTよりもステップを切ることによって エンジンが過剰に先走って回っていくというような感覚は薄れてはいるが、サーキットの連続周回など過大な負荷がかかるような場面ではだんだんオイルポンプがノイジーになって油温も高まり連続走行は厳しいのが現状だということだ。
オプションなどでオイルクーラーが準備されることも考えられるし、またWRX STIとして今後マニュアルシフトモデルも登場するという噂もあるので、サーキットなどを多く走るユーザーはそちらを選んだほうがいいと言えるだろう。