電動車最大のメリットなのにナゼ? 輸入EVやPHVが「外部給電できない」裏にある意識の違い (2/2ページ)

早くから電動化した日本車は装備が充実した

 ひとつは日本車の電動化が早かったこと。世界初の量産HVは1997年デビューのトヨタ・プリウスで、第2号は2001年に登場したエスティマHVだった。このエスティマに、最大1500Vの電源供給を可能にするAC100Vコンセントが装備されたのだ。

 当時はレジャーユースに役立ちそうぐらいの気持ちで用意したのかもしれない。ところがこれが、2011年3月11日に発生した東日本大震災で注目された。多くの地域で長時間の停電が相次いだ中で、「自家発電」可能な同車が重宝されたのだ。これが2番目の理由だ。

 トヨタは翌年、プリウスとプリウスPHVにオプションで100Vコンセントを設定。同じ年に発表された三菱アウトランダーPHEVも用意した。震災前年にデビューした日産リーフにはコンセントの用意はなく、普通充電ソケットから電気を取るV2Hを実用化したが、商用車のe-NV200はコンセントを装備した。

 つまり、日本車のPHVやHVの外部給電用コンセントは、20年もの歴史を持つことになる。それに比べると欧州車は、PHVが本格的に登場してきたのはここ5年ぐらい。そもそも歴史が浅い。

 しかもヨーロッパでは最近、東日本大震災のような大地震は起こってはいない。自然災害全体に話を広げれば、今年の夏にドイツなどを襲った豪雨災害はあるが、そこで災害に備えて外部給電を用意しようという機運が出たとしても、まだ製品化はされないだろう。

 おまけに現地の報道を見ると、豪雨災害の原因は地球温暖化にあるという意見がメイン。PHVのバッテリーに蓄えた電気を家電に使うなどというのは、温暖化防止に逆行するという声が出てきそうな雰囲気を受ける。

 このあたりは国民性もあるので、どちらがいいとは断定できないけれど、日本の電動車経験の長さと災害経験の多さが、臨機応変に電気を使おうという柔軟な発想につながったことには、同じ国に住むひとりとして賛同したい。


森口将之 MORIGUCHI MASAYUKI

グッドデザイン賞審査委員

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2023ルノー・トゥインゴ/2002ルノー・アヴァンタイム
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