さまざまなカテゴリーのベストラップが更新され続けている
冒頭に触れたとおり、日産もR32GT-Rの開発後期から歴代モデルをニュルで鍛え上げ、タイムアタックも行ってきた。
また、GT-Rの仮想敵といえるポルシェも、2000年代に入ってからとりわけ911の中のスポーツ性の高いモデルでメーカーとしてタイムアタックを行ってきており、2015年を境に日産がニュルでの記録更新を休止するまで、熾烈な争いが繰り広げられた。2008年にはR35GT-Rが市販車最速タイムをマークすると、ポルシェのエンジニアがオフィシャルな場所で”あのタイムは別のタイヤを使って出したのではないか?”と疑惑を投げかけ、結果的に恥をかいたようなカタチへ。
そして時を隔てた2021年11月現在、市販車の最速タイムは2021年6月にポルシェが911GT2RSで叩き出したもの。
ただし、ポルシェのモータースポーツにおけるパートナー、マンタイ・レーシングと共同開発した空力パーツやサスペンションなどで構成される”マンタイ・パフォーマンス・キット”などの”純正オプション”が備わったクルマであることから、その直前までAMG GTブラック・シリーズでトップに立っていたメルセデスAMGから、「ポルシェの新記録、おめでとう。僕たちの記録を破るためにパフォーマンス・キットまで用意したんだね」と皮肉まじりの祝福コメントを浴びせられている。ボクらが嬉しくいなるような大人げのなさ、だ。
もちろんそのメルセデスAMGも、メーカーとしてタイムアタックに挑戦している。
ニュルの記録を見ていくと欧州の自動車メディアがテストをしてタイムを残したものが多いのだが、メーカーとしてはこれまで触れた以外にもランボルギーニがアヴェンタドールSVJ LP770-4で市販車最速3位の座につけているなど熱心だし、シボレーがコルベットやカマロで、ジャガーがXE SVプロジェクト8で、アルファロメオがジュリアやステルヴィオのクアドリフォリオで、フォルクスワーゲンがゴルフGTIクラブスポーツSで、アウディがRS3で、ランドローバーがレンジローバー・スポーツSVRで、といった具合にオフィシャルに計測を行い、好タイムを記録してきている。
もちろんこのニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで叩き出したタイムが、クルマのすべてを証明することにはならない。けれど、パフォーマンスに関わる部分の多くを判断する重要な基準となることは間違いない。仮にハイブリッドの技術がもっと進んだり100%ピュアEVの時代が来ることになるとしても、それは変わることがないだろう。
いや、もう始まってるのかも知れない。公道走行が可能な量産車最速である911GT2RSマンタイ・パフォーマンス・キット装着車のタイムが6分43秒300。そしてこちらはあくまでもEVの競技車両であるが、2018年のパイクスピーク・マシンであるフォルクスワーゲンID.Rをベースにしてニュルに最適化させたマシンが6分05秒336。
参考までにすべてを含む車両の最速タイムは、WECを走っていたプロトタイプ・マシンをレギュレーションの縛りなしにチューンナップした”無制限クラス”ともいうべきポルシェ919ハイブリッドEVOが、5分19秒546。その差は約45秒。ID.Rのタイムは、その2年前に同じEVのNIO EP9が出した記録を40秒以上も短縮したものだった。
僕らは新しい時代になっても繰り広げられる終わりなき戦いを、きっと楽しむことができるに違いないのだ。