欧州のレーシングシーンで暴れまわった「豚」と「レンガ」 ところで、レーシングマシンでいえば、バットマンディフューザーだのシャークフィンだのいかにもカッコイイ速そうな呼び名が多いわけで、その中で「セイウチノーズ」というのはなんだか動きが鈍そうな響きで、そのあたりのギャップも印象深い理由だろうが、時代をさかのぼると「ピンクピッグ(ピンクの豚)」と呼ばれたポルシェのレーシングカーも存在していた。
ピンクピッグと呼ばれたポルシェ917/20のフロントスタイリング 画像はこちら
肉屋の看板のごとくボディカウルに豚肉の部位名が書かれたカラーリングはインパクト抜群だが、肉屋のスポンサーがついていたわけではない。
ポルシェの耐久マシン「917/20」の空気抵抗を減らすためのずんぐりとしたスタイルはいつしか「雌豚ベルタ」(Berta the Sow)という愛称で呼ばれるようになった。そのあだ名に合わせて1971年のル・マン24時間耐久レース参戦時に、このカラーリングで出走、「ピンクピッグ」の愛称が世界的に広まった。
ピンクピッグと呼ばれたポルシェ917/20のリヤスタイリング 画像はこちら
同様に、ボディシルエット由来の愛称として「フライング・ブリック(空飛ぶレンガ)」と呼ばれたのがボルボ240ターボだ。1980年代前半のグループA規格のツーリングカーレースで活躍した240ターボは、当時のボルボらしいスクエアで質実剛健なセダンスタイルで、それがレースでは圧倒的な速さを示すわけだから、そのギャップからモータースポーツファンはリスペクトを込めて「空飛ぶレンガ」と呼んだわけだ。
ヨーロッパ選手権で活躍したボルボ240Tの走行シーン 画像はこちら
そんな240ターボは、日本におけるグループAレースの原点であり頂点といえる「インターTEC」において1985年の第一回大会で優勝。さらに翌年の連覇したことで、日本でも「空飛ぶレンガ」という呼び名が定着したという経緯を思い出す。