この記事をまとめると
■2004年のウィリアムズのF1マシン「FW26」は「セイウチノーズ」と呼ばれた
■1971年ル・マン24時間耐久レース参戦のポルシェ917/20の愛称は「ピンクピッグ」
■ETCCで活躍したボルボの240Tはスクエアなスタイルから「空飛ぶレンガ」
吊り下げウイングのステーはまさにセイウチの牙だった
2021年11月1日、F1ウィリアムズレーシングのツイッターアカウントは、アントニア・テルッツィ氏が亡くなったことをツイートした。報道によると死因は交通事故、享年50とまだまだこれからというときの死去だった。
テルッツィ氏とウィリアムズF1チームの関係は、2000年代前半に空力部門のチーフエンジニアというものだ。おそらく女性として初めてF1チームにおいてチーフエンジニアとなった、まさに時代を切り開いたのがテルッツィ氏である。
そんなテルッツィ氏が手掛けたマシンの代表作といえるのが2004年シーズンを戦ったウィリアムズFW26だ。ファン・パブロ・モントーヤ選手とラルフ・シューマッハ選手がレギュラードライバーを務めたシーズンで、モントーヤ選手はこのマシンで1勝を挙げている。
2004年に4度の表彰台をもたらしたウィリアムズFW26は十分に戦闘力のあるマシンであったが、それ以上にスタイリングのインパクトが大きかった。ノーズ先端を横に広げ、そこから牙のようなステーを生やしてフロントウイングを吊るというスタイルが非常にユニークで、その姿から「セイウチノーズ」の愛称で呼ばれていた。ただし、FW26が勝利した際にはオーソドックスなノーズに変更されており、セイウチノーズが実戦で活躍したのかといえば、意見が分かれるところだろう。
ちなみに、ノーズを高くしてフロントウイングを吊るというデザインは、すでに1990年代に登場していた。ハイノーズの元祖とされているのは日本人初のF1レギュラードライバーである中嶋悟さんが現役時代に乗っていたティレル019というのが定説だ。