この記事をまとめると
■ヒットモデルの車名の恩恵にあやかるはずが逆に車名が制約となってしまったモデルがある
■派生モデルとして誕生したモデルはスタイルなどの面で制約を受けるものが多い
■派生モデルのミニバンには「買う人たちの気持ちを汲み取った商品力」が欠けていた
コンパクトカーの名前はミニバン購入層には受け入れられない
車名の評価は曖昧だ。仮に語感が悪くても、販売が好調なら文句は出ない。しかし、低迷すると「車名も悪かった」といわれる。
車名を最初に聞いた瞬間、「これは絶対に失敗する!」と確信したのが、2008年に登場したパッソセッテだった。いまはヤリスクロス、カローラクロス、ノートオーラなど、既存の車名を冠したネーミングも多いが、パッソセッテでは思い切り裏目に出た。失敗した理由は、パッソセッテは小さくてもミニバンなのに、「パッソ」という価格の安いコンパクトカーの車名を付けたからだ。
ユーザーにとってミニバンは、サイズにかかわらずファーストカーであり、幸せな家族の象徴とされる。ふたり目の子供が生まれたり成長したりするとミニバンを購入する。このときにお父さんは、「これからは本格的な子育てに頑張るぞ!」と決意を新たにするのだ。
そのようなミニバンの車名に、セカンドカー需要の多い低価格の「パッソ」が付いたら、ユーザーはどう思うか? 最初から買いたい気分を削がれてしまう。「トヨタはミニバンを選ぶ人たちの気持ちが分かっていない」と思った。
トヨタは2007年までコンパクトミニバンの「カローラスパシオ」を販売しており、同様の流れで「パッソセッテ」に行き着いた事情もあるだろうが、カローラとパッソではファミリーユーザーの受け止め方がまったく違う。
そして車名の失敗からもわかるとおり、パッソセッテは車両のコンセプトも曖昧で、車内は狭く3列目は窮屈だ。
売れ行きは低迷して、一度生産を終了したシエンタをマイナーチェンジして復活させる異例の事態に陥った。