石炭や天然ガスから水素を生成する方式も研究されている
事業規模に合わせて、様々な機器が発売されており、たとえばホンダの場合、FCXクラリティ向けとして岩谷産業と共同開発した「高圧水電解システム」を2010年代半ばから全国各地で設置を進めてきた。
官公庁向けなどが多く、機器全体のサイズは比較的小さく、設置工事も1日から2日で終わる。要するに、水素を地産地消するという考え方だ。
そのほか、大規模に水素を精製する方法は複数あり、それらの有効性(実用性)を検証するため、2010年代前半には国が主導したJHFC(水素・燃料電池実証プロジェクト)が行われた。「異なる原料・方式による水素製造・供給設備を並行して運用する世界初の取り組み」という触れ込みだった。具体的には、炭化水素原料として、脱硫ガソリン、ナフサ、メタノールからの水蒸気改質など、さまざまな取り組みがあった。
実際、筆者は全国各地のJHFC水素精製実証現場を取材し、それぞれの特徴について詳しく取材してきた。
それが近年では、カーボンニュートラルという考え方が国、企業、そして水素をエネルギー源とする移動体を使うユーザーにとっても大切な観点となってきた。
そのため、前述にように、再生可能エネルギーを使い発電して、水を電解する方式が水素精製の主流になってきたといえるだろう。
また、これと合わせて、将来国内での水素使用量が一気に増えることを想定して、国は「水素社会実現に向けた取り組み」の一環として、オーストラリアの石炭や東南アジアのブルネイの天然ガスから水素を精製し、日本まで海上輸送する方式の検証を進めるとしている。