派生車を増やす最大の理由は「売り上げ」にある
これらの派生車種に共通するのは、カローラ、ヤリス、ノート、ワゴンR、ムーヴなど、いずれも知名度が高く、販売台数の多い車種になることだ。派生車を用意する背景には、有名な車名にあやかり、馴染みやすいクルマとして売れ行きを伸ばしたい意図がある。
ノートオーラの開発者に派生車にした理由を尋ねると次のように述べた。「ノートオーラは、ノートとは別のクルマと考えて開発したが(TV CMでは日産オーラと呼んでいる)、実際には外観が良く似ている。そこでノートのシリーズに位置付けた」。
ワゴンRスマイルの開発者にも尋ねた。「スペーシアのようなスライドドアを装着しながら、全高はワゴンRと同等に抑えたから、ワゴンRスマイルと名付けた」。ノートとかワゴンRの名前が付くと、車両をイメージしやすいメリットも生じる。
このほか、日本自動車販売協会連合会や全国軽自動車協会連合会が公表する登録台数や届け出台数にも影響を与えた。ヤリスの登録台数にはヤリスクロスとGRヤリスが含まれ、ワゴンRもワゴンRスマイルの台数を含んでいる。スバルXVもインプレッサに含まれ、派生車種にすれば登録台数や届け出台数を増やす効果も生じるわけだ。
とくにヤリスは、ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリスを合計することで、国内販売の1位になった。仮にこの3タイプの登録台数を別々に算出すると、車名別の総合1位はN-BOXになり、小型/普通車の1位もルーミーだ。ヤリスやヤリスクロスの順位は下がる。
以上のように派生車種は、さまざまな目的や事情に基づいて生まれている。販売ランキングについても、ヤリスとヤリスクロス、カローラセダン/ツーリング/スポーツとカローラクロスでは、車名は共通でもユーザーにとっては別のクルマだ。正確な人気度を反映した販売データとはいえないから注意したい。