この記事をまとめると
■かつて新車購入時の値引き交渉は当たり前だった
■いまは値引きできることを知らない人もいる
■現在の値引き事情を国産、輸入メーカーともに解説する
値引きできることを知らない人も!
いまや新車購入時の値引き交渉は当たり前ともされているが、最近はかなりレアケースではあるものの、「新車購入では値引きができない」と思い込んでいるひともいる。多様化が叫ばれる時代、値引きが当たり前と思うひともいれば、値引きができないと考えるひとがいてもおかしくはない。
ここで注意したいのは、新車販売が家電販売と比較されることがあるが、新車販売においては“メーカー希望小売価格”というものが存在するが、家電では“オープンプライス”となっているということ。家電にはメーカー希望小売価格が存在しないので、仕入れた小売店がいくらで売ろうが、それは自由裁量で任されている。つまり厳密にいえば、メーカー希望小売価格が存在しないので、新車販売の世界のような“定価(メーカー希望小売価格)からの値引き交渉”というものは存在しない(店頭表示価格からのちょっとした値引き交渉はあるかもしれない)。大手テレビ通販で「特別値引きです」といっているのも、あくまで自分たちの値付けに対してのものとなる。
一方で新車については、メーカー希望小売価格が存在するので、当然お客が交渉してこない限りは値引きして販売する必要はない。しかし、「いまはクルマ自体に趣味性など、強い興味を抱くお客様が減っております。しかも、10年以上乗り続けるのも珍しくなく、『乗っていたクルマが壊れたから』といった、積極的とはいえない理由でお乗り換えをご検討されるお客様も目立ちます。そのような方のなかには値引きができることを知らなかったり、値引きができると知っていても、『こんなに値引きしてくれるの』といった反応を見せるお客様もおります。さすがに知らないからと値引きなしで売るのも罪悪感にかられますので、少なめですが値引きするようにしております」とは、現場のセールスマン。
最近は「値引きは積極的に致しません」みたいな態度をとるメーカー系新車ディーラーもあるようだが、ライバルが値引き販売していれば、それにつきあわざるをえないのも商売の世界。いまどきはトヨタ以外のメーカーでは、販売店があらかじめ見込み発注してストックしている、“ディーラー在庫車”の販売がメインとなっている(いまは部品供給問題などもあり、在庫車はほとんどない所が多くメインではない)。そうなると、すでにメーカーから仕入れているので、できるだけ早く販売しないと、維持管理コスト負担増や在庫期間が長期化すれば車両代金の支払い期限も発生してしまう。こうなると、「値引きしてでも早めに売り払う」ということになるのである。
新車の値引き原資はディーラー利益となっている。つまり、ディーラーが自らの利益(それほど多くない)を削って販売していることになる。そのため、値引き販売が恒常化したいまでは、新車販売だけでは、とても食えなくなってきているのが、新車ディーラーの現状なのである。