ひとつのバッテリーで重機から家電まで動かせる
今回発表された「モバイルパワーパックe:」は、乗り物によってバッテリーの個数が変わるのも特徴で、原動付自転車を代表とした50ccクラスの二輪車であれば、バッテリー1台から稼働させることも可能となっており、非常にローコストで運用できるのも大きなメリットだという。
また、バッテリー内には通信システムやICチップなども装備されているので、バッテリー残量や使用履歴なども全て記録することが可能。これにより、劣化したバッテリーはホンダにて回収され、再び素材などがリサイクルされるなど、一切無駄のない極めてエコロジーな運用をすることができるという。
なお、このバッテリーは専用のバッテリー交換ステーションで充電することにより、約5時間で充電が完了するほか、昼間は再生可能エネルギーで充電し、夜間は通常の電気で充電するなど、その時々に最適なパワーソースで充電を行うこともできるので、サスティナブルな運用をすることができるのも魅力のひとつ。
また、タクシーやバイクのほか、騒音問題に発展しがちな工事現場の機材にもこのバッテリーが使用できるよう現在大手メーカーコマツと共同で新型機を開発中だ。これから先、「モバイルパワーパックe:」を利用した機材によって騒音がほぼしない工事が今後可能になるかもしれない。
そのほかにも、世界の二輪メーカーなどと協力して、EVの二輪車には規格が統一されたバッテリーの運用をしていくという署名も行われており、ホンダは各社と協議を重ねながら、このバッテリーパックの特許などを必要に応じて開示し、世界共通規格にできるような取り組みや、必要に応じて開発サポートをすることなども現在検討中とのことだ。
このように、乗り物で使用するといった用途のほか、除雪機や家での蓄電池として利用することももちろん可能だ。普段は家電などを動かす電気の一部としての利用のほか、雪が降った際は除雪機を使用するためのパワーソースとして、キャンプなどのレジャーで使用する際は移動用電源として、災害時には非常用電源として使用することもできるのだ。ただし、バッテリー本体にUSBやコンセントなどで入出力する機能はないので、それぞれの用途にあった専用のケースなどが必要だが、現在開発中なので具体的は販売に関するアナウンスはもう少し先だろう。
ひとつ約10kgという重さはあるが、人間工学に基づいてデザインされたグリップ形状により簡単に持ち運びできることもポイント。バッテリー単体で税込8万8000円という値段ではあるが、これひとつでバイクや家電などさまざまな方法で運用できるというのは大きな魅力となるはずだ。
展開としては、2021年は一部法人向けに販売、来年以降徐々に販売する範囲を広めていくとのことなので、まだ一般ユーザーが手にする機会は先かもしれないが、今後これが発展していくと、最終的には充電の待ち時間がほぼゼロというEVも出てくるかもしれない。
ホンダの目指すカーボンニュートラルへの大きな一歩になるかもしれない注目の製品となるだろう。