納期遅延問題が労働力不足問題を引き起こす可能性も!
あるメーカー系正規ディーラーの店頭で聞いた話では、「ウチの店舗では販売実績(登録台数がベース)が1台というのはまだマシなほうで、0台というスタッフも珍しくありませんでした。受注台数が際立って激減したというわけではありません。9月中に登録が間に合う車種がほとんどなかったのです」とセールススタッフは語ってくれた。
さらにこのセールススタッフは、「私どもの仕事は、バブルのころとは比較にならないですが(少なくなっている)、新車を販売すると”販売マージン”がもらえます。そのためもあり、基本給はそれほど厚みのあるものではありません。そのため、いまのように深刻な納期遅延が発生し、月に1台ぐらいしか販売実績として申告できないと、貰える給料はほぼ基本給と言ってもいい状態で、日々の暮らしはかなり厳しくなっていきそうです」と話してくれた。
部品供給問題の震源地とでもいうべきASEAN諸国では、その原因となった新型コロナウイルスの感染再爆発も落ち着きを見せており、「峠を越えた」との報道も出てきている。ただ、深刻な納期遅延が続くなかでも新規受注は確実に積み上がっており、仮に早期に完成車工場の操業が正常に近いレベルに回復しても、積み上がった納期遅延車を販売現場で消化(納車を進めていきバックオーダーを減らす)していくのは並大抵のことではない。
前出とは別のメーカー系ディーラーでは、「メーカーとしては、ある程度増産をかけて2021事業年度末までにできるだけ完成車の出荷をしてくることでしょう。しかし、3月中旬以降に新車を配車してもらっても、3月中の登録はまず間に合わないので、メーカーは決算に間に合うとしても、ディーラーとしては4月に新規登録がずれ込んでしまい、2021事業年度の売り上げにはできないといったことも多くなりそうです」と諦め顔で語ってくれた。
2021事業年度締めでの上半期末となる9月であっても(それなりにメーカーとしては無理して出荷したと考えている)、販売実績が1台でもマシなほうというのでは、10月や11月は販売実績ゼロのセールススタッフがかなり多くなるかもしれないとし、「コロナ禍であっても新車販売以外で働き手不足や好況業種が目立っております。問題が長期化すれば、生活が苦しくなったセールススタッフが離職し、いまより深刻な労働力不足となるかもしれません」と、心配する声も販売現場で聞かれるようになってきた。
ディーラーのなかには、登録ベースを大原則としつつも、受注台数や車検誘致数なども考慮するところもあるようだが、頑なに登録ベースでの実績評価を譲らないディーラーが目立つようだ。「個人に問題があり受注自体が取れていないのとは状況が異なります。受注残車両(受注はしたが納車が済んでいない車両)は各セールススタッフとも多く抱えています。それなのに、納期遅延で販売実績とはならずに生活が苦しくなりそうなところがまた歯がゆいのです」とあるセールススタッフは語ってくれた。