他メーカーにはないホンダのクルマ作りの謎! 「本田技研工業」と「本田技術研究所」ってそれぞれ何をしている? (2/2ページ)

本田技術研究所は先進技術に特化

 そこで2019年に大幅な組織改革が断行された。まずはバイク部門の研究部門を本田技研工業の二輪事業本部に統合することで、研究部門が独立しているという体制を止め、一体化を進めたのだった。

 それ以前からホンダは軽自動車N-BOXの開発において生産工場である鈴鹿に開発チームから販売部門まで一体化して効率化を図るという体制を作っていた。その結果としてN-BOXの大ヒットにつながったということは、研究部門を独立させておくよりも一体化したほうがいいという変革への成功体験となったのだろう。

 そんなわけで2020年4月には、本田技術研究所の四輪商品開発機能と本田技研工業の生産本部、購買本部が四輪事業本部に統合された。研究部門は「ものづくりセンター」という部署名となり、この段階で研究所は量産に関する研究部門を失うことになる。1960年からつづいてきたホンダ独自の開発体制が大きく変わったのだ。

 では、二輪・四輪の商品開発機能を失った本田技術研究所はどうなったのか。

 より先進技術に特化した組織として再編された。ロボティクスや新エネルギー、自動運転といった次世代の価値を生み出す、まさに先進研究所として生まれ変わった。

 その成果のひとつが、先日発表された電動垂直離着陸機「eVTOL(イーブイトール)」であり、また再利用可能なロケットであろう。また、再生可能エネルギーによる燃料などカーボンニュートラルに欠かせない技術研究も行なわれているという。

 量産に関する部門としては、デザイン部門は相変わらず本田技術研究所の所属となっている。ただし、2020年の組織改革においてデザインセンターが新設されており、二輪・四輪・ライフクリエーション(発電機など)のデザイン機能を統合することで、ホンダとしてブランド価値の一貫性を強化している。

 なお、四輪のモータースポーツを担う部門については2022年より、これまで二輪のモータースポーツ活動を担ってきたHRCに統合されることが発表されている。つまり、本田技術研究所は、これまで以上に未来を見据えた研究に特化していくことだろう。

 それでもホンダがモビリティ企業であることには変わりはない。はたして、本田技術研究所がどれほど革新的なモビリティにつながるアイディアを生み出すのか、大いに注目していきたい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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