あの未来感のある動きがよかった……一時期流行した「リトラクタブルハードトップ」が激減したワケ (2/2ページ)

リトラクタブルハードトップに未来はあるか?

 とはいえリトラクタブルのハードトップの流行こそが一時的で、元々存在した、より簡素なソフトトップに戻っただけ、という見方もできる。大体、電動リトラクタブル・ハードトップが流行った頃は、まだインフォテイメント・システムどころか車載ナビがダッシュボードに一体化していない時代で、仕向け地によっては1DIN・2DINといったカーオーディオやナビが盗難に遭いやすく、オープンカーでもクローズ時の安心感が求められていた。

 だから大衆車クラスにまで電動リトラクタブル・ハードトップは普及したし、BMWの3シリーズやボルボC70など「ちょっと違うんですよ」的なブルジョワ・クラスでは、密閉できるがゆえの静粛性やパーソナル感が強調されていた。

 ただし2座のスポーツカーと同じく、販売面で数が出づらいオープンカーは、ほとんどのメーカーにとって採算の見込みづらいモデルとなりつつある。もっといえばドロップヘッドクーペの昔から屋根が無かった2座のスポーツカーとは別に、優雅なソフトトップのオープンをニューモデルとしてラインアップし続けるメーカーは、ある程度の利ザヤを稼がせてくれる上顧客を一定数以上、抱えているプレミアム・ブランドといえる。

 ロールスにベントレーといった雲上ブランドが、そうであることに驚きはないが、現行で4座オープンカーをラインアップできているプレミアムなメーカーは限られる。Cクラス、Eクラス、Sクラスを擁するメルセデス・ベンツ、6シリーズ・カブリオレこそカタログ落ちしたが2シリーズから4シリーズ、8シリーズでズラリとカブリオレを揃えるBMW、そしてミニ・コンバーチブルぐらいだ。

 いずれ今どきのソフトトップは、内張りが厚くなって遮音性や耐候性も高まり、デフォッガー入りのリアガラスもほぼ標準化している。閉めたままの高速走行や雨の日も、昔のそれとは比べものにならないほど快適になった。カブリオレほど開放的ではないが、フィアット500Cやルノー・トゥインゴ・キャンバストップも今やクラシカルな存在で、貴重な入門オープンカーといえるのではないか。

  


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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