今はプレミアムセダン需要を満たすことが役割
おそらく現在のスカイライン像に大きく影響しているのは8代目で復活した第二世代のGT-Rで間違いない。その心臓部はGT-R専用の2.6リッターツインターボ「RB26DETT」エンジンで、もちろん直列6気筒だった。スカイラインはFR駆動を基本とするのは現在にも続く伝統だが、第二世代GT-Rには「アテーサE-TS」とネーミングされたトルクスプリット式4WDシステムを採用したことの印象も強い。
ただし、この4WD駆動系についてはスカイラインのメカニズムというよりもGT-Rの専売特許といった風に捉えているファンも多いだろう(実際にはスカイラインの4WDにも使われてきている)。
そしてR34スカイラインの生産が終了した(通常モデルは2001年、GT-Rは2002年)ことによって、直列6気筒のスカイラインは消滅する。振り返ると、エンジンが直列6気筒でなくなった時点で「こんなの俺たちのスカイラインじゃない」と強く言われるようになったのではないだろうか。
とはいえ、それまでも7代目がハイソカー風のキャラクターになったときも「こんなモデルは認めない」という熱狂的なファンはいたし、9代目のボディが大きくなったことで「駄作」という烙印を押すファンは少なくなかった。いつの時代でも、それぞれのファンが自分なりの思い入れから独自のイメージを持ち、その認識とのずれを感じると「これは違う」と批判されてきたのがスカイラインともいえる。
現在のスカイライン(V37)が13代目にあたる。最新ラインアップでは405馬力の3.0リッターV6ツインターボを積む400Rグレードがスポーツイメージを強め、一方でV6ハイブリッド車には条件次第では手放し走行も可能な先進運転支援システム「プロパイロット2.0」を搭載するなど、日産の技術を象徴するモデルとなっている。
今後についていえば、そうした最新テクノロジーに基づくスポーツイメージを活かして、日産ラインアップにおけるプレミアムセダン・セグメントのニーズを満たす役割を一身に担うことが期待されているのが、これからのスカイラインといえる。
思えば、4代目の生産終了から44年も経っている。
クルマに求められる機能も変わってくるし、世界的な情勢、日本市場のニーズも大きく変化している。しかし熱心なファンはそれだけの時間が経っていることを忘れてしまったかのように、何十年も前のイメージを最新モデルに重ねてしまい不満を唱えてしまう。
スカイラインに限った話ではないが、熱心なファンであるほど愛するモデルに対して一家言あるだろう。しかし、カーボンニュートラルが求められる現代において、将来的にエンジン車が消えていくことは既定路線ともいえる。その中で、いつまでも「直列6気筒エンジンでなければ認めない」などと主張することは、ナンセンスにも思えるのだ。