定番のリヤドアスピーカーもサブウーファーも採用せず! それでもノートオーラの「BOSE」を元プロミュージシャンが絶賛するワケ (2/2ページ)

低音は響かないが音の再現度は非常に高い

 実際に走行中に試聴してみると、Bass、Trebleコントロールが中央、つまりデフォルトの状態では、サブウーファー付きのBOSEサウンドシステムのような、迫力溢れる低音は響かない。逆に、そうしたアメリカンとも言えるドンドコしたサウンドが苦手な人でも聴きやすいバランスの取れたすっきりとした臨場感あるサウンドが特徴となる。また、ヘッドレストスピーカーの効果もあって、音の定位、ボーカルと各楽器の演奏の輪郭が鮮明になり、それこそ一般的な純正オーディオでは耳に届きにくい音まで見事に再現されている。

 Personal Spaceを使えば、まるで目の前にアーティスト、バンドがいるかのような再現性さえ望むことができるし、サカナクションのライブのように、360度のサウンドに包まれたリスニング環境も可能だ。。まさに国産コンパクトカーとして真のプレミアムを実現したノートオーラに相応しい、終始静かな室内空間が生きるプレミアムなサウンドと言えるのだ。

 もっとも、サブウーファー付きのBOSEサウンドシステムに慣れている人が、そのサウンドの低音に100%満足できなくても、あまり心配はいらない。Bassコントロールを+方向に上げれば、サブウーファー付きとまではいかないものの、BOSEらしい低音を手に入れることができる。その状態でボリュームを上げても低音がこもらず、メリハリある低音を再生してくれることはもちろんだ。このあたりは、車体のスピーカー取り付け部分にまで目を行き届かせる、BOSEサウンドシステムならではと言っていい。

 個人的には、車載オーディオに過剰な期待はしない。何しろ、クルマの中はシートの布地、カーペット、ガラス、プラスチックなど、音を吸収、反射する、本格リスニングルームとは別物の、音楽を聴くのに最適とは言い難い空間であるからだ。ドライブの楽しさ、心地よさを盛り上げてくれる程度の音楽、サウンドでいいと思っている。

 ただ、ショボいオーディオはさすがにゴメンだ。名曲がそうでなく聴こえてしまうことがあるし、いつも聞いている音楽で、聴こえるべき細やかな音が聞こえないのも許せない。カーオーディオの試聴用として、超大物アーティストのライブ会場の音作りに使われていたさまざまな楽器、アタックのあるサウンドがちりばめられているCD(リッキー・ピーターソンのアルバム「SMILE BLUE」の中のWHAT YOU WON’T DO YOU LOVE/現在廃盤)を持ち歩いているのもそのためだ。BOSEサウンドシステムのようなプレミアムサウンドシステムは、そうした制約ある車内環境で、できるだけいい音で音楽を味わってほしい、という願いが込められている。

 日産ノートオーラでは、プロパイロット1.5を注文すると、スマホの音楽をBluetoothでも再生できるBOSEパーソナルプラスサウンドシステムが自動的に(!?)付いてくるのだが、カーオーディオにあまり興味がない、あるいは期待していなかったユーザーが、これをきっかけにBOSEファンになり、車内での音楽にこれまでにない喜びを感じることもあるはずである。オーディオのサウンドは好みがあるものの、ショールームでまずはお気に入りの曲を持ち込み、聴いてみることだ。

 おそらく、多くの人がヘッドレストスピーカーのカッコ良さとともに、BOSEサウンドに感動できるに違いない。分かりやすいのは、同じクルマの標準オーディオと、同じソースで聴き比べること。臨場感、音のひとつひとつの粒の聴こえ方、引き締まった低音の違いは一目瞭然である。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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