FRを求めるユーザーはいまでも存在する
そうしたなか、高級車に目を向けるとメルセデス・ベンツ、BMW、レクサスなどハイグレードなモデルにはFRが多い。
また、マツダが2022年以降にグローバルで導入する、同社がラージ商品群と呼ぶ領域では、直列6気筒が復活して、マツダ6、CX-60、CX-70、CX-80、さらにCX-90という多モデル化のなかでFR化される。
一方で、マツダがスモール商品群と呼ぶマツダ2、マツダ3、CX-3、CX-30はFFで、そして北米市場を念頭に置いた新作CX-50もスモール商品群に属するためFFとなる可能性が高い。
どうして各メーカーは高級車でFFではなく、FRを採用するのか? この件についてこれまで、マツダを含めて複数の自動車メーカー幹部に聞いてきたが、「商品戦略を熟慮した結果」という、抽象的な回答がほとんどだ。
エンジン排気量が大きいことによるクルマ全体の重量配分や車体の強度設計上の課題、またトランスミッションとの配置などから縦置きFRが主流になるという、昔ながらの考え方もあろう。だが、今後は電動化へのシフトが進むなか、内燃機関が小型化されていくと、必ずしもFRでなくても良くなるかもしれない。
一方で、商品性として見ると、上質で強固な走りの良さというイメージではFRを求めるユーザーは、今の時代でも少なくないのかもしれない。
いずれにしても、近い将来、世の中は急激にEVシフトすると、EVプラットフォーム採用により、フロントモーターのみ、リヤモーターのみ、または前後モーター、さらには四輪インホイールモーターなど、クルマの駆動に対する基本概念が大きく変わることになる。
高級車の筆頭メルセデス・ベンツは「市場環境が整えば、2030年にグローバルで全モデルを完全EV(またはFCV)化する」と明言している。
そうなると、高級車がFFじゃだめなのか、という議論もなくなってしまうのかもしれない。