GRの名は伊達じゃない! 新型ランクルGR SPORTの「最新技術」が圧巻の内容だった (2/2ページ)

GR SPORTには世界初の電子制御式スタビライザーを搭載

 その300系に「GR SPORT」グレードが新設された。GRは、GAZOO RACINGの略で、トヨタ・モータースポーツを代表する言葉として使われているが、その言葉の裏には、「最先端技術を投入した高い性能」というトヨタの自信と自負が込められたある意味頂点のグレード名だ。

 これを名乗るトヨタ車は、たとえばWRCのベースモデルとして使うヤリスに「GRヤリス」が存在するが、このモデルはWRCカーのエッセンスを量産車に落とし込んだモデルで、通常のヤリスシリーズには存在しないターボ4WDのスポーツモデルとして仕上げられている。搭載するエンジンは1.6リッターながらターボを装着して272馬力を発生。コンパクト2ボックスカー「ヤリス」の基本性格からは想像を絶したパフォーマンスが与えられている。

 トヨタが「GR」のネーミングを冠する以上は、絶対の自信を持って市場に送り出していることがうかがえる一例だが、そのGRのネーミングをランクル300系で使ってきた。どこがポイントとなるのか? その仕様に目をとおしてみると、シャシー、ボディ、エンジンと、車両を構成するありとあらゆる箇所が、最新自動車工学のテクノロジーで見直されていることがひと目で理解でき、トヨタの本気度が伝わる。なかでもGR SPORTのみに与えられた最新メカニズム、電子制御式スタビライザーのE-KDSSは目を引く存在だ。

 世界初の試みとなるこの電子制御式ロールバーは、前後のスタビライザーをそれぞれ独立したシリンダーで支持し、シリンダーの伸縮でスタビライザーの効き(強弱)を調整するシステムで、フラットでμの高い舗装路から、凹凸が大きくμの低いラフロードまで、最適な路面接地が行えるよう、サスペンションの動きをコントロールする働きを持つ。

 ロールバーそのものは、旋回Gを受けるとアウト側のサスペンションが縮み、逆にイン側のサスペンションが伸び上がる動きを示す際、アウト側の縮む動きをイン側に伝え、イン側のサスペンションが伸び上がることを規制する働きをする。車両姿勢の平行を保つ意味でスタビライザー、あるいはイン側の伸び上がりを抑制し車体ロールが大きくなることを防ぐ意味でアンチロールバーと呼ばれている。

 走行中の車両は、車体の左右、上下、前後3方向の軸(X軸、Y軸、Z軸)に対して回転力が発生し、これらはそれぞれロールモーメント、ピッチングモーメント、ヨーモーメントとして車体の動きに影響をおよぼしている。このうち、スタビライザーが制御するのはロールモーメントで、簡単に言ってしまえば、旋回中のロールモーメントの働きで車両の傾きが大きくなり安定性が失われることを防ぐ装備で、とくに傾きが大きくなる走行領域(高速旋回、急旋回など)で有効であり、レースカーでは必須、市販車でもスポーツタイプの車両では必ずと言ってよいほど装着されている装備である。

 ランクルGR SPORTでは、このロール方向の動きを制御するロールバーの効き方を電子制御による可変式としたことで、高μ路面での高速旋回や急旋回ではスタビライザーの効きを強く、大きな凹凸のあるラフロード路面では、スタビライザーの効きを弱く、あるいは解除することで、瞬間的に左右逆の動き、伸びと縮みが要求されるサスペンションの動きを可能にしたシステムである。

 要するに、舗装路走行とラフロード走行とでは、逆の動きが要求されるサスペンションに対し、ロールバーの効き具合を電子制御によって可能とすることで、それぞれの路面に対応できるようにしたわけである。

 似たようなシステムとしては、ジープ・ラングラーのルビコン(限定仕様車)に用意された「スウェイパー」という機構がある。この機構は、悪路における左右前輪の上下動をフリーにするため、スイッチ操作ひとつでフロントスタビライザーのオン/オフを可能にしたシステムである。ランクルGR SPORTの場合は、路面状況に応じてスタビライザーの効きを自動調整するため、システムとしてはGR SPORTのほうが優れていることになる。

 また、GR SPORTも含めたランクル300系に共通して言えることは、走行性能を引き上げるために最新テクノロジーを投入している点にある。なかでも、前後デフロックを電気制御としたGR SPORTの駆動系は、E-KDSSの採用と合わせ、可能な限り最高の駆動性能、接地性能を目指したものとして、ランクル、ひいてはトヨタのフラッグシップモデルとしての自負をうかがわせる投入技術である。

 SUV全盛の4WDカー市場だが、どっこい、名実ともクロカン4WDの頂点に位置するワゴンシリーズの300系、そしてGR SPORTは、最新テクノロジーの投入によってオン/オフ両路での走行性能を引き上げ、キング・オブ・クロカン4WDの地位を確固たるものとして登場。世の中の4WDファン、最新のランクルを刮目して見よ、である。


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