トータルでのバランスを考えて資金を上手に配分したい
また、同じブレーキ部品でも、車両の前後重量配分によって制動距離が変わることもあるだろう。前荷重が大きい前輪駆動(FWD)では、ブレーキをかけるとさらに荷重移動によって前輪の負担が増え、ブレーキとタイヤに負担が増える。
後輪駆動(RWD)も、やはり前輪側に重量配分が多めになるのはFWDと同様だが、その比率(負担の割合)が異なる。RWDのほうが前輪への負担がFWDより軽くなる。
日産GT-Rは4輪駆動だが、トランスアクスルといって変速機を後輪側へ配置している理由は、前後重量配分を均一に近づけようとの考えによる。
ミッドシップになれば、エンジンと変速機が客室の後ろに来るので、前後重量配分は後輪側が重くなる。そのうえで、ブレーキをかけると前輪側に荷重移動するので、前輪のブレーキやタイヤ性能は重要だが、タイヤ寸法が後輪より小さいのは、前輪の負担が後輪に比べ少ないことの表れだ。
ドイツのBMWが前後重量配分の均等(50:50)にこだわるのは、単にハンドルを操作したときの挙動の素直さを求めるだけでなく、ブレーキを掛けたときに前輪の荷重が増え過ぎず、4輪で適切な減速ができることを求めるためでもある。
ブレーキ性能を向上させようと考えたとき、ブレーキ部品の高性能化はもちろん、タイヤ性能と車両の前後重量配分まで考慮し、手持ちの資金を上手に配分するといいだろう。また、タイヤを存分に働かせるためにも、ホイールアライメントを確認することも薦めたい。