この記事をまとめると
◼︎オーバーフェンダー装着車はエンジンも過激な傾向にある
◼︎通常モデルとは別の特別なモデルに多く装着される
◼︎多くはスパルタンモデルであるが故にファンも多い
戦うために生まれてきたオーバーフェンダー装着車を振り返る
スポーティなスタイリングコンセプトとして「ワイド&ロー」といった言葉を使うことも多い。クルマにおいてワイドであることは高いパフォーマンスを想像させる普遍的価値だ。
太いタイヤを収めるため、純正ボディにオーバーフェンダーを備えた1960年代からのレーシングスタイルが、そうしたイメージにもつながっているのだろう。
ただし、ワイドボディ=オーバーフェンダーというわけではない。1990年代以降は、後付け感のないブリスターフェンダーが、特別感のあるワイドボディをつくる定番手法となっていった。
というわけで、ここではオーバーフェンダー、ブリスターフェンダーを取り混ぜ、記憶に残るワイドボディのスポーツモデルを総勢10台ピックアップしてみた。あなたは何台、覚えているだろうか。
1)メルセデス・ベンツ500E/E500
日本で非常に人気を得たワイドボディの特別なモデルといえば、非常に印象深いのが、1991年に誕生したメルセデス・ベンツ500E/E500だろう。
ブリスターフェンダーによって広げられたボディ幅は1795mm、標準ボディが1740mmなので、数値的にはさほどワイドになっているわけではないが、そのオーラは独特。フロントベイを拡大して、そこにオープン2シーターSL500由来の5リッター V8エンジンを載せているが、そうしたチューニングをポルシェが担当したということも伝説となっている。
2)ポルシェ911ターボ(930)
スーパーカーブームの主役級モデルのひとつが1975年に登場したポルシェ911ターボ。930ターボの名前のほうが印象深いかもしれないが、前期型では3リッター水平対向6気筒エンジンにKKK製ターボチャージャーを装着して、260馬力を発生。
そのパワーアップに合わせてワイド化した駆動輪を収めるべく、リヤにブリスターフェンダーが備わり、ボディ幅を120mmも拡大した。巨大なリヤスポイラーもインパクト大だ。なお、1978年モデル以降は3.3リッターへ排気量が増え、最高出力も300馬力に達している。この後期型ではタルガトップやカブリオレなどバリエーションも増えた。
3)ランチア・デルタHFインテグラーレ
1980年代後半から市販車をベースとしたグループA規格で競われたWRC(世界ラリー選手権)において、主役となったのがランチア・デルタHFインテグラーレだ。日本でも絶大な人気を誇り、WRC参戦を終えた後も日本市場向けに進化を続けたというエピソードもあるほどだ。
そのためHFインテグラーレがデルタのスタンダードと思っている人も多いかもしれないが、そもそも1979年に誕生したランチア・デルタは全長3890mm、全幅1620mmのボディに1.3~1.6リッターエンジンを積むコンパクトハッチだった。WRCで勝つために2リッターターボを積み、4WDの駆動系を与えたのがHFインテグラーレ。レギュレーションに合わせてワイドなタイヤを履くためにブリスターフェンダーが与えられたが、じつは初期のインテグラーレは全幅が1700mm足らずだったことは意外かもしれない。