オリンピックは開催もモータースポーツの大会が軒並み中止! 「プロドライバー」を軽視する日本の現状 (2/2ページ)

モータースポーツには道具が競う側面がある

 たとえば、日本人として二度のインディ500制覇という偉業を成し遂げた佐藤琢磨選手の姿を思い浮かべて欲しいが、非常にスリムな体ながら首や肩まわりの筋肉が非常に鍛えられていることに驚かされるはずだ。心肺能力についても同様で、なまった体では対応できないのが現代のモータースポーツであり、そこでパフォーマンスを出すのがレーシングドライバーといえる。

 ただし、モータースポーツが他のスポーツと異なっているのは「道具の競争」が主眼に置かれた面があるということだ。サッカーや野球といったメジャーなスポーツであっても道具は重要であり、著名プレイヤーが使っているシューズやスパイク、バットやラケットといった道具は憧れの対象とはなるが、道具が前面に出てくることはほとんどない。

 現実問題として、ホームラン王がどこ製のバットを使っているというのは報道されることはほとんどない。一方で、モータースポーツにおいては「トヨタがル・マン4連覇」だとか、「ホンダがF1で5連勝」といった風にマシンやパワーユニットが主役になっている見出しのニュースは珍しくない。

 自動車メーカーも自分たちのテクノロジーが世界トップになったことをマシンの勝利としてアピールする傾向にある。どうしてもアスリートであるドライバーは二の次といったプロモーションになってしまうことが多い。そうなると一般市民からするとドライバーのすごさよりも、各メーカーの優れた技術力が記憶に残りがちとなる。

 実際、マツダが1991年のル・マン24時間耐久レースにおいて、4ローターエンジンを積んだレーシングマシン787Bで日本車として初めて総合優勝したことは多くの自動車ファンにとって周知の事実だろうが、そのときのドライバーがフォルカー・バイドラー/ジョニー・ハーバート/ベルトラン・ガショーの3選手だったことをそらんじられるのはよほどのファンかマニアだけだろう。

 このようにモータースポーツは、道具の競争であり、主役は自動車メーカーとなりがちだ。それがレーシングドライバーをアスリートとして見なさないという風潮につながっているという部分もあるのではないだろうか。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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