この記事をまとめると
■電力を主に火力発電に頼っている日本の現状では地球環境にプラスになるとは言いきれない
■仮に全ての交通手段を止めてもCO2排出量は2割程度しか減少しないとも言われている
■内燃機関の一縷の望みは水素を燃料とする水素エンジン車しかない
EVへの転換がこそ環境に良いとは言いきれない日本の事情
あまり政治にまつわる話はしたくないのだが、一度は触れないわけにもいかないだろう。自動車を電動化して、内燃機関を将来的に廃止していくのが正義とでもいわんばかりの風潮に辟易としているからだ。
電動化にもHV(ハイブリッド)やPHEV(プラグインハイブリッド)、EV(電気自動車)とさまざまあるが、今は内燃機関をミックスしたパワートレインはすべて廃止するという方向の議論が進んでいる。
自動車をEV化すると環境にやさしく、地球温暖化に歯止めがかかるかのような論調にはまったく賛同できない。確かに街中を走行する自動車がすべてEVになれば、その地域の大気汚染物質排出は減少し環境には優しいといえる。だが、EVに充電する電力を主に火力発電に頼っている日本の現状では、地球環境にとってプラスになるとは言えないのは明らかだ。加えてEVを開発し、設備投資して工場を整備し、実験を繰り返し商品化して販売。充電インフラを整えるために至る所に給電設備を整備していくとなれば、それらの作業に際して発生する二酸化炭素の排出量も相当なものになってしまう。
火力発電だけでなく、太陽光や風力などでは当然追いつかず、EVを走らせるために原子力発電所の稼働再開を優先させるような事態となったら本末転倒も甚だしい。
原子力に頼って万が一にも3.11のような災害が起これば、地球規模で取り返しのつかない状況に陥るし、そうでなくても使用済核燃料ゴミの処分や再処理についても狭い日本、自然災害の多い地質学的環境から原子力に頼るべきではない。
そもそも地球の温暖化は自動車の排出する二酸化炭素だけが原因ではない。航空機や船舶、あらゆる交通手段で発生し、また戦争や紛争地帯、動植物の呼吸でも排出されている。あらゆる交通手段を一斉に止めても二酸化炭素の排出量は2割程度しか減少しないという試算を公表している科学者もいる。
植林して緑地帯を増やしても、昼間は光合成により酸素が産生されるが、夜間は二酸化炭素が排出される。また、地球の内部から噴出している二酸化炭素も相応にあるらしく、人類だけが二酸化炭素排出を完全に止めても、地球の温暖化は若干その進行を緩めこそすれ、止まりはしない。すでに温暖化にもイナーシャ(慣性)が大きく働いてしまっているのだ。
EVだ電動化だと騒ぎたて、電動化技術やインフラ整備が投資や投機の対象と化し、利権がからみ、政治問題にも発展している現状をみれば、この問題は自動車の電動化だけで収まる話ではないのだ。