セダンの魅力は決して失われていない!
■日本では残念ながら衰退傾向
そんなセダンであるが、とりわけ最近の日本ではその人気に翳りが見えている。ここ数年だけで数々のセダンが生産終了へと追い込まれた。
●直近で販売を終了したセダン
・トヨタ・マークX(2019年12月)
・トヨタ・プレミオ/アリオン(2020年3月)
・レクサスGS(2020年8月)
・日産ティアナ(2020年7月)
・日産シルフィ(2020年9月)
・ホンダ・グレイス(2020年7月)
・スバル・レガシィB4(2020年7月)
上記以外でも、ホンダ・レジェンドも2021年内での生産終了が発表されているし、日本のセダンの代表格であるトヨタ・クラウンと日産スカイラインに関しても、いつ生産終了になってもおかしくないといわれるほど販売台数が減っている。
●セダンが衰退していった理由とは?
理由①道具としての定着
セダンが衰退した理由のひとつに、クルマが憧れの対象ではなくなり、生活のための道具として定着したことがあげられる。もともとセダンはバンよりもスタイリッシュであることがウケて人々の憧れとなっていたが、クルマの普及が進み道具として定着すると、人々は美しさよりも効率的なものを求めるようになる。キャビンの全高よりも低い位置に設けられる開口部の狭いラゲッジルームでは、ミニバンやSUVなどのハッチバックタイプのクルマに比べてどうしてもスペース効率で劣り、不便と感じるようになってしまうのは必然だ。
理由②居住空間の狭さ
また、人々の嗜好の変化も影響しているだろう。かつては高級な素材で仕立てられたインテリアや豪華な調度品などに上質感を感じていたものが、現在では素材などよりもむしろスペースに余裕のある広さにこそ満足感と高級感を感じるようになっている。
理由③宣伝方法の難しさ
さらに、セダンはその宣伝方法にも難しさがあった。というのも、セダンの魅力はスタイルと走りの良さに集約されるが、近年はどこのメーカーもミニバンやSUVに力を入れていたため、「ミニバンよりもカッコいい」「SUVよりも走りがいい」とは声高に宣伝しにくい。ミニバンやSUVの利益率の高さを考えるとなおさらだ。結果としてセダンは、最大の魅力を武器にすることができないというジレンマに囚われてしまったのだ。
こうしてセダンは、ミニバンやSUVにその座を奪われることになってしまったと考えられる。
■まだまだ買える! おすすめのセダン5選
しかし、もちろんすべてのセダンの生産が終了してしまったわけではなく、絶対数こそ減ったものの、いまでも日本で買えるセダンはある。その中から代表的なモデルをピックアップしてみた。
①トヨタ・カローラ
日本の国民車であるカローラは現在11代目となるが、ハッチバックやワゴン、SUVなど多彩なボディスタイルをラインアップしているのも特徴のひとつ。そして、その中にはセダンも用意されている。11代目となるカローラセダンは、全幅1700mmを超える1745mmとなって3ナンバー化しているが、実は先代モデルとなるカローラアクシオも5ナンバーセダンとして併売されている。
いまでは日本で購入できる国産5ナンバーセダンはこのカローラアクシオだけとなっている。
②トヨタ・プリウス
トヨタが世界に誇るハイブリッドカーであるプリウスもセダンに分類される。現行モデルは2015年に登場した4代目で、キャビンとラゲッジルームが分割されていないハッチバックセダンだ。ハイブリッドシステムを普及されたその功績は大きいが、すでにハイブリッドシステムがミニバンやSUVにも普及したいまとなっては、その存在意義も薄れつつあるのも事実だ。
③マツダ3
2019年、それまでのアクセラからグローバルでのモデル名であるマツダ3に改めてデビューしたCセグメントモデル。セダンはファストバックとともにラインアップされており、ファストバックモデル同様のシンプルなラインで構成されたフォルムは非常にスタイリッシュ。しかし、日本国内での影は非常に薄い。ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドと多彩に用意されたパワーユニットと、すべてのパワーユニットで2WDと4WDが選べるのがウリだ。
④トヨタ・クラウン
国産セダンの代表格といえばトヨタ・クラウンをおいて他にない。現行モデルは15代目を数え、1955年から60年以上に渡って継承される車名のブランド力は絶大なものがある。2018年デビューの現行モデルは、ファストバックに近いスポーティなスタイルで若返りを図ったが、それが災いしてかどうかは不明だが、低調な販売となっている。そのため生産終了やSUVへの転身などの噂が絶えないのは非常に残念だ。
⑤メルセデス・ベンツEクラス
国産メーカーのセダンは絶滅に瀕した状況だが、海外メーカー、とりわけドイツメーカーのセダンに関しての状況は大きく異なる。メルセデス・ベンツEクラスは世界的にプレミアムセダンとしての地位を確立しており、国産セダンが大きく販売台数を減少させる中でも堅調だ。これは高級車としてのブランド力で、国産メーカーがメルセデス・ベンツには対抗できていないとともに、世界のマーケットでは、いまだ高級車はセダンがデフォルトであることの証でもある。日本で高級車とされるミニバンは、世界では子供たちの送り迎えをするためのクルマとしかみられていないため、高級車の販売枠をミニバンに奪われることはないのだ。
■記事まとめ
このようにセダンはクルマの基本形態でありながら、こと日本に関してはその存在意義が薄れかけている。しかし、それは決してセダンの魅力、「スタイルの良さ」や「走りの質の高さ」などが失われたわけではないこともわかったことと思う。いま一度、セダンの魅力が見直され、セダンが復権することを願いたい。