【試乗】最後に手に入れたスーパーハンドリング! 30台限定の「NSXタイプS」が見せた圧巻の操縦性とは (3/3ページ)

タイプSは集大成にふさわしいスーパーハンドリング!

 今回発表されたNSXタイプSは世界限定車であるが、日本では30台のみ販売される。しかも、今回のタイプSを最後にNSXの生産が終了することが決定され、32年続いたNSXの有終の美を飾ることになった。F1がなくなり、NSXも生産中止。ホンダはどこに行くのか? と心配するファンは少なくないが、その話は置いといて、まずは最後のNSXとなるタイプSのパフォーマンスをホンダの鷹栖テストコースでドライブしてきた。早速、そのインプレを紹介しよう。

 オリジナルのパワーはエンジンが507馬力、前後のモーターパワーを合わせると、システムの最高出力は581馬力を発揮していたが、タイプSではエンジンとモーターを進化させ、システムの最高出力は610馬力に到達している。これでフェラーリやポルシェの600馬力倶楽部に仲間入りしたが、NSXの武器は前後加速Gの高さだけではなく、モーターベクタリングによるハンドリング性能の高さが秀逸なのだ。タイプSはタイヤからダンパーなどを徹底的に見直し、文字どおりのスーパーハンドリングを手に入れることになった。

 エンジンを始動したときのデフォルトはスポーツモードであるが、ダイヤルを左に回すことで、静かなクワイエットモードで走ることができる。もし、バッテリー容量を増やすことができるなら、街中はEVで走ることができるはずだ。

 デフォルトのスポーツモードでも十分に速いし、楽しい。スロットルを踏みこむと、3.5リッターV6ターボが元気よく、車体を加速させる。約1.8トンとは思えないほどのパンチ力だ。続いてダイヤルを右に回すと「スポーツ+」となる。鷹栖には2つのワインディングがある。一つはEU路、これはニュルブルクリンク郊外のカントリー路を模擬している。そしてもう一つのワインディングは、ニュルブルクリンクのエッセンスを織り込んだ厳しいコースだ。

 まずEU路でスポーツとスポーツ+を試してみたが、「スポーツ+」ではモーターベクタリングが機能し、実際の舵角が親指一本くらい少なくてすむ。狭いコースであるが、610馬力をラクにコントロールできるのは、ステアリングが驚くほど正確だからだ。スピードが高まるほど、ベクタリングは安定性志向に変化するが、ニュルブルクリンクを模擬したコースでわかったことは、スピードに応じて操縦性が最適化されていることだった。

 トラックモードではドライバーの操作が最優先するように工夫されている。具体的にはパワートレインやVSA、そしてSH-AWDがサーキットのラップタイムの邪魔にならないようにセットされている。

 ガレージから出る時は、モーターで静かに走ることができるし、サーキットでは狼に変身する。一般道路は「スポーツ」で流し、ワインディングでは「スポーツ+」で走りたい。まさに変幻自在な走りが楽しめるわけだ。最後に乗り心地だが、磁力を使ったダンパーのおかげで、粗々しさはなく、アストンマーティンにもプレゼントしてあげたいシャシー性能であった。残念なことは、あとにも先にもタイプSを手にするひとは数少ない。

 世に出ることはなかったV10NSX、ごく限られた人だけが味わえるNSXタイプS。そして、二度と聞くことができなくなるホンダF1。そんなことを考えたでけ、眠れない夜が続きそうだ。


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