SUV+e-POWERの最強セットな上に納期も早い! それでも日産キックスの大ヒットを妨げる呪縛 (2/2ページ)

キックスの地味イメージは国内デビューのタイミングが影響

 ただヤリスクロスが納車半年待ちといった情報もあって世の中の注目を浴びているのを見ると、キックスは存在感が薄いように見える、つまり、もう少し売れてもいいのではないかとも考えている。いまいち影が薄いとも思える理由のひとつは、まず国内デビューのタイミングがあるだろう。

 キックスのデビューした2020年6月といえば、新型コロナの感染拡大により、日本全国に発出されていた最初の緊急事態宣言がようやく解除された直後となる。当時はまだまだ未知な部分の多かった新型コロナウイルスに対し、世間が今以上に慎重に感染予防を進めていた時期でもある。新車市場に目を移すと4月、5月と全国的に行動自粛が求められていたこともあり、新車販売が大きく落ち込みを見せていた。

 しかし、緊急事態宣言が解除された直後から新車販売は、4月や5月の落ち込みが嘘のように急速な回復を見せた。「それではキックスもその波にのって」といいたいところだが、デビュー直後はタイ工場からの供給遅延もあり、納期がいきなり2021年2月になるなどと店頭では説明を受けることとなった。

 発売直後から深刻な納期遅延では、「良さそうだな」と思っていても、「それではほかへ」となってしまった人も多かったことだろう。納期遅延が深刻なこともあったのか、メディア露出も控え目となり、キックスというクルマ自体をいまもって知らないという人も世の中には多いのである。

 キックスがデビューしてからそうこうしていると2020年11月に新型ノートがデビューする。先代モデルとは異なりe-POWER仕様のみとなり、そのe-POWERシステムも先代のブラッシュアップタイプとなっていた。そのため、キックスに搭載されるe-POWERユニットは世代の古いものとなってしまった。このあたりも販売面で影響していないことはないだろう。

 モノグレード(単一グレード)構成となり、プロパイロットも標準装備。メーカーオプションといえば、インテリジェントルームミラーとバックビューモニターぐらいと、完成車を輸入していることもあるが、メーカーオプションもシンプルで購入検討もしやすい。しかも、多くのメーカーで部品不足による、納期遅延に悩まされている現在でも、日産のウェブサイト上では納期は1カ月程度となっており、大注目されてもおかしくないのだが……。

 FFしかないのも響いているのではないかとの話もあるが、たとえばホンダ・ヴェゼルの先代モデルでは、売れ筋は圧倒的にFFだったとの話も聞いているので、FFのみということは、それほどネガティブに働いていないように見える。

 ただ、日産系セールススタッフと昨今の納期遅延問題について話していると、日産系セールススタッフは「納期が早いといってもなかなか日産車にご興味を持っていただけないようで、目立って売れ行きが良いということはありません。少し前にメーカーにおいていろいろゴタゴタ(カルロス ゴーン氏の一件など)がありましたが、お客様の多くはまだ覚えていらっしゃるようで、それもあって積極的にはご検討いただけないようです」とも語っていた。

 オーラも加わったノート系も、もう少し話題になっても良いのではと思うし、キックスの存在感の薄さは、クルマだけに原因があるわけではなく、さまざまな要因が重なっているものと見たほうがいいうだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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