行政も普通充電の普及に支援をシフトすべきだ
ところが、クルマを日常的に利用しない人や月極駐車場を管理する不動産業者は、EVやPHEVへの関心が低く、また大手媒体を含め世論として充電設備に関して急速充電器の普及が重要と考えているため、集合住宅や月極駐車場への普通充電設置の認識が高まらない。行政も、社会基盤への補助金などを進めているが、主体は急速充電器を視野に入れた内容だ。
しかし、EVやPHEVの充電の基本は自宅での普通充電にある。普通充電設備の普及が進めば、急速充電器整備への予算を減らしてもそれほど大きな課題とならず、税金の無駄遣いにもならない。
世論を普通充電の重要性に誘導しなければならない。たとえば、充電コンセント設置については、集合住宅の管理組合の合意を得なくても報告義務で済むようにするなど、商習慣の変更や法整備が必要だ。また、マンション開発業者や月極駐車場を管理する不動産業者などへ、充電に関する重要性を周知徹底する努力をすべきだ。
そうした課題解決のため、日産自動車はマンション開発業者の一社である大京アステージと共に、集合住宅の管理組合へ働きかけを行うなどの手を打ってきた。だが、民間企業一社の努力では、世論の形成には至りにくい。ここは行政の支援が必要だ。
英国では、集合住宅の充電器設置に対する支援がはじまっている。欧州各国では路上駐車が一般的なので、日本とは違った事情があり、その点からもCHAdeMOとは違うコンバイン方式の充電規格が推進されている。
単にベータかVHSかといったかつてのビデオ方式の違いという話ではなく、その国や地域の交通事情、あるいは住まいの在り方を考慮した充電基盤整備が必要で、日本は集合住宅と月極駐車場への普通充電を急ぎ整備していかなければEVやPHEVの普及がおぼつかず、世界に置いて行かれてしまう懸念がある。