ロードスターの存在は世界の自動車メーカーを動かした
海外勢も多かった。なかでもガチンコ勝負を仕掛けてきたのが、ローバーMGFとフィアット・バルケッタで、ともに1995年に発表されている。MGもフィアットもライトウェイトスポーツの名門。その経験を生かしつつ、MGFはこのブランド初のミッドシップ、バルケッタは前輪駆動のスポーツカーとして送り出された。
バルケッタはその後マイナーチェンジを実施し、MGはその後TFに切り替わるなどの進化を遂げた。しかし前者は2007年、後者は2011年に生産を終えている。
ジャーマンプレミアムブランドも相次いで参入した。1996年にデビューしたメルセデス・ベンツSLK 、BMW Z3、ポルシェ・ボクスターだ。
メルセデス・ベンツとBMWは同じクラスのセダンのメカニズムを活用したFRで、SLKは当時はまだ珍しいリトラクタブル式ハードトップを採用。Z3は遅れてクーペを追加した。ボクスターは水冷化された911とコンポーネンツを共有することによって、リーズナブルな価格を実現した。
その後、Z3はZ4に切り替わり、現行型はトヨタGRスープラとの共同開発生産車となった。SLKはSLCに名を変えたものの生産中止となった。当初のポジションのまま生きながらえているのはボクスターだけということになる。
ロータス・エリーゼもこのグループの一員に入れていいだろう、デビューは1995年で、アルミを押し出し材を接着で組み上げるという革新的なスペースフレームにロータス伝統のFRPボディを組み合わせることで超軽量を実現。最近まで生産が続けられるロングセラーになった。
同様のモデルに、ルノースポールがワンメイクレース用に開発したスピダー、日本のスペシャリストが英国で生産を行ったトミーカイラZZ もあったが、この2台はどちらも20世紀末に生産を終えている。
その後2002年には4台目の軽スポーツであるダイハツ・コペンが登場。このカテゴリーでは初の前輪駆動で、ルーフは脱着式ハードトップのほか、リトラクタブル式ハードトップも用意された。2014年発売の現行型は、3種類のスタイリングを選べることも特徴になっている。
現行ロードスターが出た2015年には、ホンダからビートの生まれ変わりと言える軽ミッドシップオープンのS660が登場。さらに翌年にはロードスターと基本設計を共有するアバルト124スパイダーも登場している。しかし、124は2020年でフェードアウトし、S660は来年生産を終えることが決まっている。
じつはロードスターもリーマンショックのとき開発が凍結された。そのためデザイナーの中山 雅さんはSUVのデザインを担当することになり、こちらが先にCX-5として登場している。しかしその後、ロードスターの継続が決まり、2015年に現行型を送り出すことになった。作り続けることへの情熱と努力が並外れていることが、ライバルを寄せ付けない理由かもしれない。